部品材料の調達機能の充実や、現地のテイストにあわせた製品開発のために現地設計部門を強化するとなると、出来上がった人材を他社から引き抜くことが必要になるが、そこに問題が発生する。中小企業の間は賃金や処遇の仕掛けがそれほど充実していなくとも問題は大きくならない。しかし、他社から優秀な人材を引き抜こうとすると、たとえば、賃金制度の充実が不可欠になる。従来からいる従業員と新しく入ってくる従業員とのバランスをどうとるかが問題になるからだ。
仕事の内容と給与の関係をハッキリさせるためにはジョブ・グレード制などの制度を導入し、処遇の公平性と透明性を高めなければならない。多くの場合、この作業には問題がおこってから取り組む形になりがちである。しかし、仕事と処遇の関係の整理は、現地法人設立以来、一生懸命育てた人材を他社に引き抜かれないためにも必要である。処遇制度は、結果的に昇進ルートを明示するので、従業員がキャリアを考える上での目安となり、転職することの利害得失を考える材料になりうるからである。
一方、制度設計を担当する人材だが、この時期、立ち上げ期や中小企業期に赴任し頑張った日本人スタッフの交代の時期が迫ってくる。フェーズ2(前期)に若手を投入したり、交代要員を十分に育成したりしてあれば問題は少ないが、前回コラムVOL.45で触れたように、多くの場合は要員不足であり、後任は経験が十分でない人がつくことになりやすい。この場合の問題点は、制度設計がコンサルタントや現地人マネージャーに丸投げになり、会社の実態に合わないものになったり、現地事情に不案内なまま日本流を押し付けたりすることである。