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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.46  グローバルな競争と人材開発(10) 現地化プログラム レベル2&3が必要

一つ上の専門職能教育プログラム

  フェーズ2(後期)の特徴点は海外生産の本格化である。この特徴に対応しようとすると海外と国内で異なるタイプの施策が必要になる。海外の方から考えてみよう。

  この時期になると現地法人は中堅企業に成長している。そのため主要な課題は、中小企業が中堅企業に脱皮する際発生する問題の克服で、処遇制度や人材開発プログラムの充実が必要になる。業務的には、現地での部品調達や近隣諸国への製品輸出という業務が普通になってくる。間接業務に携わる現地の従業員も増えるので、従来は日本での実習などという形式でカバーしていた職能別の初級、中級トレーニングを現地で行う必要が増加する。
そのため、教育プログラムを作る現地の担当者をトレーニングするという「一つ上の専門職能教育プログラム」が必要になる。仮にこのレベルの教育を「現地化プログラム2」と呼ぶとすると、(「現地化プログラム1」は、海外製造法人立ち上げに必要な教育プログラムを想定)このプログラムは、現地人マネージャーと、フェーズ2前期に海外勤務を経験し日本に戻った元現地法人マネージャーが協力し、できれば本社や親工場の人材開発のノウハウを活用して、開発するのが望ましい。
しかし、この記述ですぐわかるように、この理想形は成立しないことが普通である。理由は要員不足と内なる国際化(例えば本社教育部門に海外経験者が少ないなど)の遅れである。
 

マネジメント教育の導入

  部品材料の調達機能の充実や、現地のテイストにあわせた製品開発のために現地設計部門を強化するとなると、出来上がった人材を他社から引き抜くことが必要になるが、そこに問題が発生する。中小企業の間は賃金や処遇の仕掛けがそれほど充実していなくとも問題は大きくならない。しかし、他社から優秀な人材を引き抜こうとすると、たとえば、賃金制度の充実が不可欠になる。従来からいる従業員と新しく入ってくる従業員とのバランスをどうとるかが問題になるからだ。

仕事の内容と給与の関係をハッキリさせるためにはジョブ・グレード制などの制度を導入し、処遇の公平性と透明性を高めなければならない。多くの場合、この作業には問題がおこってから取り組む形になりがちである。しかし、仕事と処遇の関係の整理は、現地法人設立以来、一生懸命育てた人材を他社に引き抜かれないためにも必要である。処遇制度は、結果的に昇進ルートを明示するので、従業員がキャリアを考える上での目安となり、転職することの利害得失を考える材料になりうるからである。

  一方、制度設計を担当する人材だが、この時期、立ち上げ期や中小企業期に赴任し頑張った日本人スタッフの交代の時期が迫ってくる。フェーズ2(前期)に若手を投入したり、交代要員を十分に育成したりしてあれば問題は少ないが、前回コラムVOL.45で触れたように、多くの場合は要員不足であり、後任は経験が十分でない人がつくことになりやすい。この場合の問題点は、制度設計がコンサルタントや現地人マネージャーに丸投げになり、会社の実態に合わないものになったり、現地事情に不案内なまま日本流を押し付けたりすることである。

もう一つの問題は、日本に戻ったスタッフの「後任は私」と考える現地スタッフが育っていた場合である。日本人マネージャーの仕事の範囲や責任が明確に文書化されていないと、中小企業時代に育てられたスタッフは、実際はビジネス全体の理解や日本側との調整能力という点ではまだ実力が十分でないにもかかわらず、「この程度なら自分もできる」と思いがちであり、後任は私と期待する。そのため後任に日本人が充てられると裏切られたと感じて辞めてしまう。

日本からマネージャーポストに派遣される人が、中小企業時代は課長クラス、中堅企業になったら部長クラスと専門職能でも上位の人が後任として着任する仕掛けになっていて、現地スタッフが課長クラスに昇進というのがベストであるが、その場合でも、他社に引き抜かれる可能性は否定できない。

解決策は早めにジョブ・グレード制などを導入することと、現地スタッフ向けのマネジメント教育(専門職能教育、現地化プログラム2とは区別し「現地化プログラム3」と呼ぶことにする)を充実させることである。これによりキャリアについての安心が生まれ、優秀な人材の維持が可能になる。   フェーズ2(後期)になると、海外生産の本格化が国内のオペレーションのいろいろな部分に大きな影響を及ぼし始める。そのため、あらためてビジネス全体の構造を考える必要が明らかになってくる。次回はこの点を考えてみよう。

 
 

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