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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.47  グローバルな競争と人材開発(11) グローバル化プログラム レベル1の開発

ビジョンの再構築

  海外生産が本格化すると当然国内の生産に影響が出てくる。従来海外市場向けに国内で生産していたもののうち汎用品は減少する。不況になった場合は、海外、国内どちらの生産を縮小するかで意見が対立する。やがて海外で生産したものが日本に持ち帰られる時代がくることも想定される。

従って、どのように国内の生産体制を再編成するか考えざるを得ないが、工場の閉鎖や人員対策をともなうので実際にはなかなか思い切った手が打てない。問題解決には、将来を見越した大きな絵、グローバルな市場にどのように対応していくかというビジョンが必要である。この絵に基づいて、これまで進めてきた海外事業の内容や運営の方法を見直し、徐々に次のフェーズ3への準備をおこなわなければならない。この見直しが十分でないと、フェーズ3で大きなトラブルに直面することになる。
 

現地法人への権限移譲とその結果生まれる報告の義務

  新しいビジョンに基づいて最初に実行しなければいけないことは、現地法人の権限の明確化である。この場合必要なのは、決定する権利を与えられると、結果を報告する義務が生まれるということを理解してもらうことである。
権限が委譲された以上それに関してはなんでもできると思い込む現地マネージャーがよくいるのだが、まったくフリーハンドの権限移譲というのは存在しない。
しかし、「ささいなことでも日本側は報告を求め、現地側の仕事を妨げるという苦情」は、この時期とても多くなるので、日本側としてなぜ特定の事項について報告が必要なのかを、文書化して説明しておかなければならない。

たとえば「教育投資の金額は売上高の5%以上を確保するのが新しいビジョンの方針なので」、とか「グローバルに活用する人材と考えるのはこのジョブグレード以上なので」とかである。

さらに、委譲できなかった部分についても、どのような条件が整えば委譲するかも明示する必要がある。要は、立ち上げ期、中小企業期、中堅企業期というように現地法人の発展段階によって、できることできないことを区分し、どのように governance(統治)するかを決めるということだ。日本企業はこの点をあいまいにしたまま事業を進めてしまうきらいがあるので、留意しなければならない。
 

内なる国際化と外なる日本化の促進

  中堅企業に成長した現地法人からは、親会社に対しさまざまな依頼がくる。例えば、現地製品と日本で生産される製品とが同じ部品を使えるよう設計の仕様を変更してほしいといった種類の要求である。

しかし、日本側は、設計変更は手数がかかり日本側のメリットはすくないとの理由で、現地側の要求を十分検討せずに、NOといってしまう。実際は高級品、汎用品といった差別化にあまり影響を与えない部品であるにもかかわらず、である。あるいは、日本側のほんのわずかな努力で現地側に大きなメリットを生み出せるのにもかかわらず、である。

こういった現象は、通常のビジネスの上で海外事業と関係が薄い部門に海外から依頼がいった場合に発生する。現地側の事情にうといためにおこる配慮不足である。これは、日本側は協力的でないという印象を生む。

  逆に、現地側が日本の事情をよく知らないために問題がおきてしまうケースもある。相談すべき部署や相談すべき人に相談することができない場合である。日本企業の場合、このような場合はこの部門に相談せよといった規則が制定されてはいないのが普通で、それは設計図に細かいことまで書いてないのと同様、常識の世界である。しかし現地で採用されたマネージャーは、そんなことはわからないので自分で判断してしまう。その結果、日本側に、現地は勝手な行動をするという印象が生まれてしまう。

  これらのタイプの問題の解決策は、新しいビジョンの説明とそれに向けての運営方式の変更を周知徹底すること。日本側では、海外と関係の薄い部門の人々にも海外事業の実際をしらせること(内なる国際化)と、現地採用の人々に日本の事情を教えること(外なる日本化)。これらのニーズをワンセットにして対応する教育プログラムをグローバル化プログラム1と呼ぼう。従来のものとは量的、質的に大きく異なるので現地化プログラムという呼び方が適さなくなってくるからである。これは、次回のテーマであるフェーズ3への移行のために、どうしても必要な準備でもある。

 
 

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