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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.48  グローバルな競争と人材開発(12)
フェーズ3の課題 I 地域本社
  フェーズ3の課題は大きく分けると次の4つになる。
1)統治問題
2)外部人材の活用問題
3)外・外コミュニケーション
4)上記の問題解決のためのグローバル化プログラム レベル2
今回は、この時期になってクローズアップされてくる課題である統治(ガバナンス)問題の代表として地域本社について考えてみよう。
 

地域本社の果たすべき役割

  この段階では現地法人の数が増えるだけでなく、その多くが中堅企業に成長し、一人前の企業として自分で判断し意思決定したいという「自律的な行動にたいする欲求」が強くなる。製品の日本へ持ち帰り(現地法人からみれば日本への輸出)や近隣諸国への輸出が始まり、親会社の経営全体にたいする影響も大きくなってくる。抱える問題もその解決に法務、税務、広報など、高い専門知識が必要なものが増えてくる。
一方、日本での仕事が中心で海外との関係がそれほど強くなかった研究開発やデザイン開発部門でも、海外事業の進展に伴い拠点を海外に設けたいという気持ちが強くなる。そこで必要になってくるのが、本社から権限の一部を委譲されて設けられる、日立アメリカなどと親会社名と地域名の組み合わせた地域本社である。
国別に子会社が設けられた場合は、特別に統括会社を設けず、そのうちの一番古い会社や、売り上げ規模の大きい会社がその役割をになう場合もある。
 

現地法人に対する専門職能支援

  地域本社の機能で、現地法人側および日本の事業部門側から最も歓迎される機能は、職能別のサポートである。例えば、北米に進出した事業部別の現地法人子会社が5社以上あったとして、それぞれの会社が法務部門を持つことは、コストのうえからも現実的ではない。日本の法務部門が日本からサポートするのも効率的ではない。地域本社の法務部門を充実させ、そこの現地人社内弁護士が各社でおこる法律問題の解決を支援するのが合理的である。(費用の負担については、次回で解説する)資材調達なども、まとめて発注することによるコスト低減効果があるので集中購買が有利である。

  日本の事業部門が、新たにその地域に進出しようとする場合、税や環境に関する法制度、労使関係や処遇水準など必要な情報を、地域本社から入手することが出来る。このような視点からは地域本社は、理屈の上では望ましいものなのだが、実際には屋上屋を架する組織として歓迎されない場合も多い。地域本社が実際に機能するためには、現地法人との役割分担上の工夫がいろいろ必要となる。このことは、国内でおこる本社と事業所の関係とよく似ているのだが、より明文化されたルールや地域本社はどのようなことをする部門なのかについての説明が要求される点が異なる。(これについては、いずれグローバル化プログラム レベル2で詳しく触れる)

 

子会社間の利害調整と本社への提言

  地域内の子会社間で利害がぶつかる場合、例えばインドにはタイから製品を出すのか、それともインドネシアからかとか、特定の部品を集中購入して他の国の工場に配分する調達センターをどこに置くかなどの問題が生まれた場合、いちいち日本に問題解決を依頼しなくても、地域内で調整できればこれにこしたことはない。また、地域の子会社が共通に抱える問題についての解決を日本側に促したり、解決案を提案したりする活動は、地域本社が現地の子会社に受け入れられるために必要なものである。

 

本社代行機能

  地域本社がおこなう特徴的な活動の一つに、地域社会に対し会社を代表して行う活動がある。たとえば投資家に対して行うPR活動や地域社会と良好な関係を保つ為に必要な活動、ブランドや知的所有権を守る為の活動、同業他社と一緒になっておこなう政府関係にたいする働きかけなどがそれである。

  これらは本来、日本の本社が直接行うべき活動だが、現地の事情に応じて素早い対応が必要なので現地本社が代行しておこなうものである。この機能は、現地の子会社に常に歓迎されるとは限らない。
本社機能を果たすためには、現地法人からの情報が必要であり、報告を求めたり、時には活動に口出ししたりしなければならず、現地の子会社から見ると、地域本社と日本の事業部門という二人のボスがいる感じがし、自律的活動の障害のように思われるからである。

 

日本と現地の分断機能

  地域本社の機能の別なものに日本の本社に害が及ばないようするという機能がある。これは、現地で起こした問題は現地会社の問題で、日本の親会社の問題ではないとすることにより、日本に損害が及ばないよう努める機能で、上記の本社代行機能との関係で微妙な問題が発生する。通常、現地に設立された法人であれば、more than an arm length と表現されるように、日本の親会社とは一定の距離を保ちながら独自の活動をしている主体であり、全て親会社にコントロールされているものではないと言う前提でできている。

従って、業務委託契約などに基づき代行するものと本来の活動は明確に区分されていなければならないのだが、問題を抱えた現地法人にとってはこの姿勢はありがたくない。困って地域本社に相談に行くと、「それは貴方の問題なので貴方が解決しなさい」といわれ、「何の為の地域本社だ」となりかねないからである。次回は地域本社機能をはたす為に必要な人材はについて、外部人材の活用を題材にしながら考えてみよう。

 

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