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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.54  グローバルな競争と人材開発(18)グローバル人材とは

グローバル人材の前提は、組織内一人親方論

  コラムvol.37以降、グローバルな競争時代に必要とされる人材の育て方について議論してきた。このコラムを初めのほうから読んでいただいている方は、「21世紀の競争の鍵は、組織内一人親方の数であり、そのため21世紀型人材マネジメント(本コラムのタイトルです)の基本は、組織内一人親方に好ましい生態系を整えることにある」という主張が、議論の前提になっていることを理解されていると思う。

しかし、グローバル人材の育成に関心ありということで途中から読み始めた人に、「このコラムを最初から読まなければ理論構成が分からないぞ」などというのでは、傲慢のそしりを免れない。そこで、世の中に流布されているグローバル人材像と関島の意見は、どこが異なるかを以下に整理して、グローバルな競争と人材開発の項のまとめにすることにしよう。

 

グローバル人材の人材増像も育成方法も定まっていない

  グローバル人材についてはいろいろな意見が飛び交っている。一般的には外資系企業で活躍する人、海外勤務経験のあるベテラン、留学経験者などがグローバル人材の典型とみなされ、語学力や異文化コミュニケーション能力、MBA,MOTなどの資格を持つ特別な人が想定されている。しかし、こういう人は特別な人なので、直ぐには育成できそうにない。

育成の手段として、一定の数の人材を海外要員の候補と指定して語学研修やセミナーに参加させたり、既存の社内の教育プログラムをMBA的なものに改訂したりといった努力がおこなわれているが、問題も多い。留学させても転職してしまう、自己主張だけ上手くなる、MBAを重要視した結果がサブプライム問題に端を発する経済危機ではないかなどなど、批判も多い。

  海外勤務経験者に意見を求めると、語学力、現地事情の理解、異文化コミュニケーション力、高い専門性、人材マネジメント力などなど、グローバル人材が備えるべきいろいろな能力があげられるが、それらの能力を全部備えるのは、とても優秀な人以外は無理なのではと感じてしまう。外資系企業の事例を参考にしたいが、海外オペレーションの規模が違うし、企業文化も異なるので、外資系企業のようにはできないのでは、と考える。

グローバル経営、グローバル人材という割には、グローバルに活躍できる人の人材像とその育て方ははっきりしていないのだ。

 

特別な人と考えることが間違い

  グローバル人材の人材像や育て方がはっきりしないのは、グローバルな競争の実態を生き生きと思い浮かべることなく、グローバル化イコール海外と短絡しているところに原因がある。グローバルな競争が普通なことになったのに特別な人で対応するというのでは、競争に勝てそうにない。

普通なことには普通の人で対応できるのでなければおかしい。そもそもグローバル化と呼ばれる現象に、普通の人は対応できないのであれば、グローバルな競争が普通なことになるはずがない。実際は、普通の人がそれなりに適応しているのでグローバル化が進んでいると考えるべきである。

 

世界では組織内一人親方のほうが普通の人

  企業にとって必要な人材は、それぞれの企業が選んだビジネスモデルと事業の発展段階によって決まってくる。このことは、国内事業であれ海外事業であれ、変わる理由はない。ただ海外事業の発展段階については、経験がないと具体的に把握しにくいというだけだ。

それゆえ既に進出というステージから撤退というステージまでを経験した家電や半導体、コンピュータなどの経験を参考にモデル化した海外事業の発展段階が役に立つ。

また人材面では、発展段階ごとに異なる能力が必要になるが、共通するのは、ベンチのサインを一々見ないでも仕事のできる専門家(組織内一人親方)という資質である。組織内一人親方はこれまで日本企業が育ててきた人材である。そうであれば、育て方を知らないわけではない。必要なのは、ベンチのサインで動く人が普通の人なのではなく、組織内一人親方の方が普通の人だという考え方である。
  実際、世界中を眺めてみれば、経済のグローバル化という機会を活用し、生き生きと仕事をしているのは、組織に所属するが従属せず、組織を動かす、経営者でもあり従業員でもあるような人材であることが見て取れる。いや、グローバル化が進んだ世界では、そういう人のほうが普通の人である。

それ故、このコラムは、グローバル化は特別な人ではなく普通の人が作り出していると考え、「グローバル化時代の普通の人である組織内一人親方を対象にした人材マネジメントとは、どのようなものであるべきか」を考えるべし、と主張しているのである。

 
 

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