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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.55  組織(1)組織はビジネスモデルに従う

Self-employed の数がグローバルな競争の勝つための必要条件

  グローバル人材をめぐる議論の多くが、海外事業の実態を具体的に思い浮かべることなくおこなわれていることが気になったため、ついついグローバル人材開発に関する枝葉のことまで説明することになってしまったが、21C型人材マネジメントの主要なテーマ、「組織内一人親方に好ましい生態系をどう創るか」からするとグローバル人材の育成という課題は人材開発問題の付録のようなものである。組織内一人親方を増やすことイコール、グローバル人材を増やすことだからである。

  そこで、概ねの方向(コラムVol.2〜)、HRMの創り方(Vol.7〜)、人材の特定(Vol.11〜)、処遇(Vol.14〜)、人材開発(Vol.22〜)と続いた本来の路線にもどって、組織内一人親方が十分に力を発揮できるようにする為にはどのような組織の創り方が良いのか、組織についてはどのように考え方が必要なのか今回以降考えてみたい。
 

戦略を支援するHRMからビジネスモデルを支援するHRMへ

  組織をどう考えるかについてのここまでの議論を整理すると、HRMはこれまで、その時代の経営上の最大の課題の解決に役立つことを期待され、そのように機能してきた。(コラムvol.7「ビジネス・モデルを支援するHRM」参照)組合問題が最大の課題である時代には、労使関係の改善に役立つ施策を工夫し、雇用機会均等が課題の時代には、評価制度の改善、労働力不足時代には採用や教育訓練に注力という具合である。

90年代以降、企業間の競争は戦略の優劣に左右されるという視点から、戦略を支援するHRMが主流となり、さまざまな議論が展開されている。この「HRMは、企業の業績を左右するものに貢献することを求められる」という、考えてみればごく当然な論理からすると、ビジネスモデルによる競争がつづく21Cでは、HRMは戦略というよりは、もうすこし幅が広く多様性に富むビジネスモデルというものに貢献することが求められると考えられる。

 

ビジネスモデル実現能力の重視

  戦略を支援するHRMよりは、ビジネスモデルを支援するHRMと考えた方が実情にフィットする理由の一つに、戦略理論の重点の変化がある。戦略理論を大きく区分すると、事前に合理的計画を立てるグループと、事後の創発を重視するグループに分かれるが、どちらのグループも、変化の激しい時代という外部環境に影響をうけ、次第に戦略を実際に実行する能力を重視するようになった。

組織や人材、技術や業務システム、学習能力など戦略実行に必要な力をまとめて組織構築能力ととらえ、組織構築能力が競争に勝つ為に必要と考えはじめたのだ。しかし、変化が激しく、全てのことを予め決めておくことが出来ないとすると、明らかになった状況にあわせ柔軟に目標やプロセスを変更する能力が大切になる。

  例えば、従来は競争相手と考えていなかったような業種の企業が市場に参入してきたような場合〈例えば、フィルムカメラの業界にデジタルカメラのメーカーが参入したような場合や一般商店街という世界に食品スーパーという業態が登場した場合〉は、参入されたサイドは、戦略だけでなくビジネスモデルそのものを再検討せざるをえない。

 

自己変革能力も組織構築能力の一部

  業務を通しての発見がビジネスモデルの変更をせまる場合もある。小売業でお客さんを30代から40代の中年層と考えていたが、顧客分析の結果、買ってくれているのは50代から60代の熟年層であり、好みは活発に活動する中年層に近いと分かったとする。考えてみれば、可処分所得が多いのは、停滞の20年のお陰で年収がアップしない中年層ではなく、これまでの蓄えが十分にあり元気な熟年層である。市場も大きいのにこれまであまり着目されなかったと気が付いた。であれば、ビジネスモデルを急いで変更するのが得策である。

品揃えに始まり、お店の雰囲気、接客態度まで変えるだけでなく、競争相手に勝つ為の戦略も考え直さなければならない。自分のこれまでの強み、仕入れに強いという特徴を生かして、この分野の品揃えを増やして闘うという選択もあれば、会社によっては店舗運営のノウハウに優れているという強みを生かし、多くの店舗を落ち着いて高級感のある店構えに短期間で切り替え、接客マニュアルもそれに合わせて変更してしまうという選択もありえる。

 要は、変化の激しい時代の課題はビジネスモデルの実現能力なのである。次回はビジネスモデル実現能力に組織の作り方はどのように影響するかを基本に立ち戻って考えてみよう。

 
 

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