MAGTFの考え方から学ぶことができるのは、素早く動くためには、「小さくても闘うために必要な一揃いの機能を持った組織」が不可欠だということである。企業経営でいえば、規模は小さくても、研究開発から製造・販売までの機能と人事・勤労、経理、資材というサポート部門を備え、独自の資金源を持つ独立採算の組織が必要ということになる。
この組織の役割は、新しい顧客や新しい提供価値、新しい競争の勝ち方などを見つけ次第直ちに試してみて、ノウハウを蓄積することである。軍事でいえば威力偵察のできる派遣部隊である。敵の部隊がいることは分かっても、どの程度の部隊なのか、敵の主力なのかそうでないのか、どのくらいの火力を持つ部隊なのかなどは一度戦闘してみないとわからない。
そこである程度以上の戦闘能力を備えた部隊(場合によっては師団規模)に偵察目的で攻撃を仕掛けさせて、様子を観るのが威力偵察である。事業の場合も、市場もニーズもあることはわかったとしても、実際の市場の規模や適正な価格などは試してみないと分からない。アイデアを実行する上でなにが難しいか、どのようなノウハウが必要なのかもわからないことが普通だ。従って本格的な投資をする前に、一当たり当たってみることが必要である。課題はどのような組織を用意するかである。