ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.67  組織(13)組織と戦略VI 緊急展開部隊

探索期間は短い方が良い

  現在の競争優位性が永遠に続くことはない。いつか新しい優位性を見つけなければならない。だが探索期間は、短ければ短いほど良い。現在の優位性から次の優位性に素早く切り替わることが出来れば、業績の低迷期間を短くできる。従って、将来に備え常にお客さんやお客さんが求める価値、競争の勝ち方の変化を観察していることが必要である。

だがこの活動は、程度の違いがあっても、どの企業でも取り組んでいることではある。違いは、発見したことに「どのくらい早く対応できるかどうか」にかかってくる。この時、参考になるのは軍事である。戦場での状況変化に素早く反応できるかどうかが勝敗のカギであり、そのための組織対応が進んでいるからだ。

 

即応部隊の成立

  即応部隊Force in Readiness という概念が確立したのは、ベトナム戦争時である。そのタネは朝鮮戦争の時に生まれた。核による抑止力で通常戦争の脅威は小さくなったと思われていたのに、相変わらず通常兵器による戦争が避けられないことが明確になったのが、この戦争である。この時、中国軍が大軍を投入したことにより一挙に不利となった米軍を支えたのが、歩兵が航空機の支援を受けて戦う「近接航空支援」という戦い方である。

  この闘い方は、ベトナム戦争時には、攻撃用ヘリコプターが開発されたことにより、一層強化され、その後海兵・空・陸・機動部隊MAGTF(Marine Air Ground Task Force)という緊急展開部隊に引き継がれた。何処で発生するかわからないゲリラとの戦闘に対応するのに、通常の部隊を常に戦闘可能な状況にしておくというのでは費用がかかるだけでなく、素早く反応するという点でも問題がある。
そこで、普段から迅速に動くことができ、いろいろな種類の戦闘に対応できる部隊を整備しておき、戦闘がおこり次第直ちに現場に派遣し対応するという考え方である。通常部隊が現場に駆け付けるまで状況を支えるのがこの部隊の役目である。

  現在では、民族対立やテロに応じ、世界中どこへでも直ちに派遣される即応部隊として海兵隊全体がその役割を担うようになっている。

 

二兎を追うためのA:威力偵察ができる試行組織をもつ

  MAGTFの考え方から学ぶことができるのは、素早く動くためには、「小さくても闘うために必要な一揃いの機能を持った組織」が不可欠だということである。企業経営でいえば、規模は小さくても、研究開発から製造・販売までの機能と人事・勤労、経理、資材というサポート部門を備え、独自の資金源を持つ独立採算の組織が必要ということになる。

この組織の役割は、新しい顧客や新しい提供価値、新しい競争の勝ち方などを見つけ次第直ちに試してみて、ノウハウを蓄積することである。軍事でいえば威力偵察のできる派遣部隊である。敵の部隊がいることは分かっても、どの程度の部隊なのか、敵の主力なのかそうでないのか、どのくらいの火力を持つ部隊なのかなどは一度戦闘してみないとわからない。

そこである程度以上の戦闘能力を備えた部隊(場合によっては師団規模)に偵察目的で攻撃を仕掛けさせて、様子を観るのが威力偵察である。事業の場合も、市場もニーズもあることはわかったとしても、実際の市場の規模や適正な価格などは試してみないと分からない。アイデアを実行する上でなにが難しいか、どのようなノウハウが必要なのかもわからないことが普通だ。従って本格的な投資をする前に、一当たり当たってみることが必要である。課題はどのような組織を用意するかである。

 

反「集中と選択」あるいは、人材開発のための無駄Redundancy

  経営者の経験を積ませるための子会社という考え方がある。新しい会社を経営させ失敗や成功を体験させるのだ。この場合失敗が本体の業績に大きな影響を与えては困る。

それゆえ、本体の事業と関係が薄い方が良い。しかし、あまり小さいオペレーションでは練習にならない。集中と選択という論理に逆らって関係の薄い分野に乗り出したと批判されるような事業が良いのだ。実はこの仕掛けが即応組織に応用できる。

  有望なビジネスモデル(顧客、提供価値、競争の勝ち方の一組のセット)を見つけ次第、新会社を設立すればよい。普段からその準備をしておくのである。そのためにはベンチャーキャピタルの機能をもつ組織を本体が持っていなければならない。そのためのRとCも同様である。なによりもそのような子会社に派遣されることは自己のキャリアにとって大きなチャンスと考える従業員が必要である。次回は即応性対応に必要なRとCについて考えよう。
 
 

前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.