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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.71  HRM戦略(3)手掛かり I 競争の仕方 複雑性の制御

プラットフォームと機能デバイス

  顧客の多様なニーズに応えるための方策として商品開発の場合、共通のプラットフォームを作り、その上に機能モジュールをのせるという方法がとられる。機能モジュールの組み合わせにより多様なニーズに応えようという工夫だ。
この考え方が広まるに連れ機能モジュールを開発する部品メーカーの地位が高まり、製品プル型からデバイスプッシュ型に産業構造が変化しつつあると言われるが、この方法の難しいところは、プラットフォームの作り方である。いろいろなニーズに応えるために「共通なものはなにか」を見極めなければならないので、きわめて高い「ものごとの抽象化能力」が要求される。

  HRMにおいても各国の法制度や労働市場、その土台となる文化や教育制度の違いという複雑性に対処しようとすれば、この考え方を取り入れHRMの仕掛けのうち世界中で共通な部分と国別に異なるものとを区別する必要があるということになる。前回のコラム(vol.70)で触れた公平性を確保するための評価制度などは、プラットフォームではなく機能デバイスのうちの一機能モジュールであるということになる。

 

コアとノンコアの区別あるいは戦略的アウトソーシング

  複雑性にたいするもうひとつの考え方は、全てに自分で対応することは出来ないので、他の人の力を借りようという考え方である。自分は、自分の得意なことに集中し、そうでないことは他の人に任せるとか、自分の事業や能力のコアとなる部分とそうでない部分を区分し、コアでない部分はアウトソーシングをするというのがそれである。

この場合、得意なことと事業のうえでコアとなる部分が一致するとは限らないので、自分でする( make) 、 外部から購入する( buy ) を判断する必要が生まれることになる。(make or buy については別途くわしく説明するが、時間軸や自分と競争相手との位置関係が影響する。) 要は、資源の効率的な組み合わせで複雑性に対応しようという考え方である。

 

サプライチェーン・マネジメントは、内外リソースを繋ぐ仕掛け

  外部のリソースを活用しようとすると内部のリソースと繋ぐ仕掛けが必要になる。
それがサプライチェーン・マネジメントSCMなのだが、不幸にして日本では、今回の大地震やタイの洪水のお蔭で、部品の供給ルートをいかに確保するかというリスク対策が話の中心になってしまい、SCMついての議論が単純化されてしまっている。

「不屈のサプライチェーン」というタイトルで特集を組んだ日経ビジネス(‘12 3月5日号)でも一つの企業のSCMの効率がテーマで、「完成品メーカー、部材メーカー、販売会社、輸送会社など一つのSCMにつながった企業それぞれの効率を向上するのが目標であり、別なSCMにつながった企業の効率との優劣が課題」とする考え方は希薄である。

  サプライチェーンは、部品や材料をどう確保するかというところから出発したのは間違いない。部品や材料が切れないためには在庫をたくさん持てばよいのだが、それではコストが掛かりすぎる。適正な在庫とはどの程度かという問題だが、答えを出すためには売れ行きとか、製品在庫や製造期間など自社に関する情報以外に、部品会社の情報、例えば注文すれば何日ぐらいで部品を入手できるのかなどが必要になる。
部品会社の方も買い手の販売計画や売れ行きなどの状況が分かれば対応がしやすい。SCMとはそれらの情報をあつめ共有化することにより、全ての関係者の効率を上げようとする手法であり、部材の安定的入手は目標の一部に過ぎない。

  当然のことだがトップレベルのSCMを導入すると人材マネジメントはその影響を受ける。特に業績評価の在り方は修正を迫られるが、それについてはSCMについての深い理解が前提となるので、ここでの説明は割愛する。次回は変化に対する反応速度をあげてリスクに対応しようとする考え方について検討しよう。

 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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