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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.75  HRM戦略(7)手掛かりII プラットフォームとしての文化

何にたいしての好き嫌いか

  文化とは何かという設問にたいする答えはいろいろある。しかし、HRMの視点からいえば、仕事の仕方についての好き嫌いといってよい。例えば、日本海軍の場合、「スマートで、目さきが利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り」という表現があったが、好き嫌いをよく説明しているだけでなく、軍艦という当時の先端機器を扱うに必要な心構えをも表している。

スマートとは西欧的であれという意味で、合理性、科学性を重要視すべしという意味を当時はもっていたと思われる。目さきが利いてとは、次に起こりそうなことを予測して行動せよということであり、几帳面とは海軍が求める行動様式で、マニュアルに定められたことをきちんと守ったり、やったことやらなかったことを正確に記録したりしなければ、軍艦は上手くうごかないということを示唆している。好き嫌いには、効率についての考え方が色濃く反映する。

  日本の伝統ある企業には、例えば日本郵船のように、humble (質素、真面目)であることをカラーと考えるところも多い。
これは、プロテスタントが大切と考える生活態度で、明治の日本が西欧文化に触れて共鳴した精神の一つである。企業が社会と共存するためには、humble でなければならないし、humbleであることがある意味かっこ良いことであったからだ。そこでは、大向こうをうならせるスタンドプレーは求められていない

 

プラットフォームと部品(機能デバイス)の相性の制御

  プラットフォームを仕事の仕方についての好き嫌い、すなわち企業文化とした場合、最も部品として重要なのは、「人材の特定(例えば誰を採用するか、誰を昇進させるか等)」である。この相性が悪いと戦略実行手段としての組織が上手く動かない。それ故、HRM戦略の上位目標(誰と闘って、何を獲得するか)の一つは、例えば、「グローバルな競争相手と闘って、自社の企業文化に適合する優秀な人を獲得する」といったものになる。このことを担保するために必要な手段が、ビジョンであり評価制度であり、人材開発の仕掛けである。

従って、HRM戦略の中位目標は、「すべてのHRMの部品は、好ましい人材を選ぶのに役立つよう造られなければならない」という方針を徹底するというものになる。例えば、ビジョンは、我が社に置いて優秀な人材とはこういう人だと規定すべきである。こういうことをしたいので、こういう人が必要とアナウンスしてもよい。

要は「我が社はこういう人が好きだ」ということが応募する人に分かるようにでなければならない。米国の航空会社サウスウエストエアラインでは採用の際、「こういう人ならうちの会社で上手くいく」と従業員が推薦する人を優先するというルールを持っている。企業文化というプラットフォームと人材の相性を良くするための工夫である。

 

「優秀な人材」の意味は、「会社により異なる」

  プラットフォームと部品の相性という視点を「人材の評価」というHRMの基本業務に当てはめてみると、戦略目標である「優秀な人材」の意味は、企業によって異なるという結論に行きつく。
研究開発型の企業の場合、本来業務の仕事をしながら、俗に密造酒づくりと呼ばれる、自分が好きなテーマの追及にも励む人が優秀とみなされるが、量産型製造会社の場合は、与えられた研究開発テーマに全力で取り組み、早期に結論を出す人が優秀というように、である。ところが実際の大学生の採用活動を見ると、どうも「どの会社も同じような人を優秀と判定しているのではないか」と疑われるふしがある。

これは、プラットフォームとデバイスという考え方が不足しているというよりは、それ以前の問題すなわち自分の会社はどういう会社かという認識がはっきりしないためではないだろうか。

  戦略とは差別化であり、企業文化とは仕事の仕方に対する好き嫌いである、という基本原理に立ち返りもう一度、採用の方法など見直す必要がある。HRM戦略を考えるための手掛かりは、「自分自身を識る」ことにある。

 

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