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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.76  HRM戦略(8)手掛かりIII HRMの戦略目標 再論

二兎を追うためには何が必要か

  21世紀型人材マネジメントの方向を決める手がかりの三つ目は、HRMの歴史であり、それによれば、企業業績に大きく影響を与えるものに貢献を求められてきたことがわかる。21世紀の競争は、世界中に競争相手とサプライヤーがいるという条件下でビジネスモデルを競うというものなので、そのためには「時に相反する価値の同時追及を可能とするHRMでなければならない(例えば、組織に関するコラムvol.66〜68参照)というのが歩き出しての一応の結論であった。

しかしこれだけでは、戦略性が明確でない。HR戦略という以上、戦略目標、戦場、必要な装備、兵力、戦い方、成功・失敗の判定条件についての議論が必要である。すなわち、「二兎を追うためには何が必要か」を具体的に考えなければならない。

 

戦略目標、戦場、必要な装備、兵力、戦い方、戦略の成功・失敗の判定条件

  戦略目標は、誰と闘って何を獲得するかによって決まってくる。21世紀の競争の在り方から考えれば最上位の戦略目標は、「グローバルな競争相手と闘って、優秀な人材を獲得ないし、(引き抜かれないよう)確保する」となる。優秀な人材の定義は、ビジネスモデルおよび事業の発展段階により異なることは既に述べた。

しかし、ビジネスモデルや事業の発展段階は異なっても、優秀な人材に共通する要素は、「いちいちベンチのサインを見ないでも仕事のできる人」、別な表現でいえば、「専門性、人間性などを信頼されて相談される人」である。関島の表現では、組織内一人親方である。(コラムvol.54「グローバル人材とは」参照)したがって中位の戦略目標は、組織内一人親方の獲得・確保となる。

  戦いの場は世界中、必要な装備と兵力(ともに広義)は、ビジネスモデルにより異なるので省略。闘い方は、打率でいく場合と打席数(あるいはその両方)でいく場合があるが複雑性の制御というグローバル化時代の要請から考えると行軍速度、即応性といったことに重点を置かざるをえないと考える。
顧客の嗜好の変化など全てを事前に予測することは不可能なので、ときに後出しジャンケン的な対応をせざるをえないからだ。

ベンチのサインを見ないでも仕事の出来る人が求められる理由がここにもある。よって、戦略の成功・失敗の判定条件は、「組織内一人親方の数の大小」としてよい。
 

イノベーション対策が必要

  世界中に競争相手がいるということは、思わぬ分野から競争相手が出現するということでもある。イノベーションがいろいろなところで発生するからで、現代の競争では、これに備える必要がある。行軍速度や即応性の重視はこのための準備だが、それだけでは受け身に過ぎるといわざるを得ない。イノベーションに対する最も有効な対策は、イノベーションの影響を受ける側に回るのではなく、イノベーションを起こす側になることである。そのためにはイノベーションを起こしやすい体質といったことを企業文化や組織、人材に求めざるを得ない。

  イノベーションは、異質な考え方がお互いに刺激し合うことによって生まれると考えられているが、それを積極的に実行するのがオープン・イノベーションといわれる方法である。他人の力を借りることにより、商品開発・研究開発の速度を上げたり、コストを削減したりするのだが、このとき大切なのはプロジェクトのリーダーである。当然、複数の専門家が自由に意見を戦わせる場の設定ができるリーダーでなければならず、従来型の指揮官タイプのリーダーではうまくいかない。

チームビルディングが上手な、関島式表現でいうところの、「先頭に立たないリーダー」が必要なのだ。他人の力を借りるに当たり、「何をオープンにし、何をクローズドにするか」は、競争の勝ち方に基づいて決めなければならない。よって、事業戦略が重要になってくるが、それをサポートするHRMとしては、その戦略目標の一つに、先頭にたたないリーダーの育成が挙げられなければならない。

  まとめると、HRMの中位戦略目標は、組織内一人親方の獲得・確保と、先頭に立たないリーダーの育成であり、戦略の判定条件は、それぞれの数である。

 

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