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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.78  HRM戦略(10)手掛かりIII 具体的戦略目標は、組織内一人親方に合う文化の構築 II

キャリア上の選択肢が多いことを許容する文化

  具体的戦略目標のポイントは、組織内一人親方が好ましいと思う文化の構築である。二兎を同時に追いかける文化は、競争優位の活用型組織と探索型の組織、プロセス重視型と柔軟性重視型の職種があり、そのどれを選択するかは、個人に任されているので、キャリア上の選択肢が多い文化ということができる(「個人が選択する」ということを成立させるために必要な制度的な仕組みについては、コラムvol.14「水準は誰が決めるのか」vol.15「当事者間で決める場合の問題点」vol.16「個人が自分を代表する人を選ぶ」、等を参照)。

自分の専門性や、やりたい仕事が第一という組織内一人親方及びその候補生にとって、広い意味で組織や職種を選ぶことがやりやすいということは、もっとも望ましいことのひとつである。

 

職位に関係なく一人一票という意思決定方式

  専門家として仕事に責任を持つ以上、意思決定に加わりたいと考えるのは当然である。自分の判断が取り入れられないのであれば、頑張る理由がなくなってしまう。しかし、専門家の間で意見が異なるケースは通常のことなので、ここでいう「判断が取り入れられる」とは、意思決定に参画できるということと同義である。この場合、議論の仕方については「専門家であれば職位に関係なく一人一票の権限を持つ」という原則が貫かれる必要がある。

そうでなくて課長よりは部長の意見が優先するというのであれば、議論を通すことによって正しい判断に行きつくというプロセスが生きてこない。むろん議論することによって平凡な結論に落ち着いてしまうという欠点はあるが、異なる意見をぶつけ合うことによって革新的なアイデアが生まれるというメリットを生かさない手はない。

  ときどき誤解されてしまうのだが、最終的な決断の責任は職務権限を持つものにゆだねられるということと、一人一票という形で自由に討議することとはけして矛盾しない。革新的なアイデアはそう簡単に生まれないかもしれないにしても、いろいろな議論をへての結論であれば、前提条件の見落としや隠れたリスクを過小評価してしまうという失敗の可能性を小さくすることができるからだ。

 

ワイワイガヤガヤが大事

  一人一票方式が好ましいとしても、「誰でも発言してよい」という習慣は、急には生まれない。普段からワイワイガヤガヤやっていないと、空気を読み発言を抑えてしまうということになってしまう。「有言実行」とか「和をもって尊し」といった表現は本来、十分な議論を前提としたうえでの望ましい態度だと思う。

激しい議論の結果出た結論を尊重し、後まで意見の違いにこだわってはならないというのが本意で、黙ってやれとか、なんでもよいから仲良くせよとか言っているわけではない。それゆえ、一人一票方式を採用するには普段が大事である。風通しの良い組織が望ましいのは確かだが、そのためにはワイワイガヤガヤできる風土がなければならない。HRMの仕事の大事な部分に風土づくりがある理由である。

 

振返りの習慣

  一人一票方式で決めたから全てよし、と安心することはできない。人は間違えるものなのだ。「ああいう決定をしたけれどそれでよかったのだろうか」と振り返る習慣がないと一試合ごとに強くなるといった状況はうまれない。経験から学ぶ風土がどうしても勝つためには必要なので、ワイワイガヤガヤする議論の中にこれでよかったのかと振り返るくせが含まれなければならない。

  失敗を直視することと失敗の責任を問うことは別で、責任を問うことと個人を非難することは別である。日本が失敗から学ぶのが得意ではないのは、これらのことを混同するからではないか。こう考えると、HRM戦略の具体的目標の一つは、どうしても文化の創造・維持といったものにならざるを得ないと考える。

 

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