リーダーシップが必要なのは、環境の変化に対応するためには現状を変えなければならないからである。
上記1)、2)の条件は、ビジネスモデルが外部環境の変化に素早く適応することを要求する。そのためには二兎を追う文化(グローバルな価値とローカルな価値の同時追及、競争優位性の活用型組織と探索型組織の併存など)と行軍速度の引き上げ(産業クラスターの活用、組織学習、正しい方向に向かって努力していても目標時間内に到達できなければ評価しない評価制度などの導入)が必要だが、これまで検討してきたように、HRMの内容をかなり大胆に変更しなければならない。(コラムvol.69〜79「HRM戦略」の章を参照)抵抗も十分予想される。
一方、1)、2)の条件から、必要な人材は、組織内一人親方と呼ばれる「ベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできる人」でなければならない。この数がグローバルな競争の勝ち負けに大きく影響する。よってHRMは、上記人材の確保、育成を戦略目標とする必要がある。
戦略の実行面に焦点を絞ると、事前に決まる戦略では、計画そのものにポイントがあるだけでなく戦略意図の伝達や役割分担の明確化に配慮が必要である。事後的に決まる戦略では、戦略眼のあるミドルの育成と、それらの人に裁量の自由を多めに与える仕掛けを工夫しなければならない。また、事前に決まる戦略であれ、事後的に決まる戦略であれ、計画の修正は常に起こるので、迅速なリソースの組み替えは必要条件である。競争相手との位置関係(勝っているか負けているか)でmake or buy の選択がおこなわれるが、どちらを選択するかの判断には時間軸が考慮されなければならない。