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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.88  リーダーシップ開発(9) 競争に勝つには何が必要か

日本という異質な競争相手

  市場経済対計画経済という効率を争う競争に、市場経済側は社会福祉の充実(混合経済)という対策を取り入れ勝利しつつあったが、その後、新たな競争相手の出現に驚く。日本である。この場合、アメリカも日本も市場経済側に属しているので、ソ連を社会主義で異質と区分できたようには、簡単に別扱いできない。そのため、低賃金だとかダンピングだとか研究開発のただのりだとか文句をつけて、「日本は異質」と決めつけてみても、市場でシェアを奪われるのを防ぐことはできなかった。

もっと日本のやり方について研究しなければ、という機運がでてきたのは当然のことである。その結果、BCG(ボストン・コンサルタント・グループ)が見つけたのが、経験曲線や成長率・占有率マトリックスである。これらは、日本のやり方にも合理性があることを認め、米国も従来のやり方を変える必要があることを示唆した。
 

競争に勝つための公式あり、という考え方

  競争に勝つためには、「こうすればよい」という基本になる公式があればよい。BCGの答えは経験曲線とマトリックスだが、マイケル・ポーターが出した答えは、競争に影響を与える5つの要因について分析し、その結果に基づき戦い方(コストでリーダーシップをとるか、差別化をするか、ニッチな市場に集中するか)を選択するという方法である。ビジネス戦略は、企業が狙う市場にたいする自分の立ち位置(ポジショニング)に即して策定されるべきだという考え方である。どちらもデータを集め、公式にあてはめて答えを出すので、どのよう企業の分析にも使うことが出来る。

  では、米国で成功した日本企業は、この公式のように行動したのだろうか。この疑問は、ポジショニング学派と、戦略は学習から生まれると考えるラーニング学派との間に論争を巻き起こした。BCGは、ホンダは経験曲線を活かして、米国市場に参入したと考えた(1975英国政府にたいする報告書)しかし、日本の方法にも合理性があるという点ではBCGと同じでも、「Japanese Management」(1981)の著者リチャード・パスカルの答えは異なっていた。

 

ホンダのバイク市場での成功事例

  パスカルの調査によれば、ホンダの場合、事前にはっきりと決められた計画は特に無く、ただ250CC と350CC の大型オートバイを売ろうと考え事業をスタートさせた。
しかし、大型バイクは売れず、駐在員が乗り回していた50CC の小型バイクの方が注目を集めたので、方針を変更、小型に注力することにした。

そして、バイクのイメージを、「皮ジャンを着た人のもの」から「素敵な人が乗るもの」に変え、新たな市場を開拓することに成功した。現場から学習したのであり、戦略は事前に策定されたのではなく、事後的に発見されたのである。

 

ホンダの事例にみるリーダーシップの在り方

  この事例が示唆するのは、本社が全てを前もって決めるのではなく、現場が状況を見ながら判断する余地が与えられていることの大切さである。行動して、分かったことに基づき目標を修正する、Fire, Aim (撃て、狙え、)型の戦略の妥当性である。この場合、事業部門のトップに、現場の提案を受け入れる度量があることと、実戦部隊に戦略眼と上司を説得する Leading Up とよばれる能力があることが、この方式が成り立つ条件になる。

となると、リーダーシップの役割は、「あらかじめ戦略を定めること」にあるのではなく、「新たな戦略が生まれるよう仕事のやり方をマネージすること」と考えることができる。
変革型リーダーシップに関心が集まった理由の一つに日本がある。次回は変えることに着目したことにより、リーダーシップ理論に起こった変化について考えてみよう。

 

 

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