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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.89  リーダーシップ開発(10) 「変える」に着目すると分かる事

リーダーシップとマネジメントは異なる

  70年代になると、日本という異質な競争相手が現れただけでなく、規制緩和や金融技術の進化なども加わって、企業間の競争が激しくなった。そのため、効率向上よりは競争に勝つことに関心は向けられた。昨日と同じことを今日もするのでは、あるいはやり方を変えて、少し効率をアップするのでは、競争に勝てない。もっと抜本的な変革と呼ぶような変化が必要である。この時に浮かんできたのは、「これまでの研究対象であった監督者的リーダーより責任・権限が大きい人、ジェネラル・マネジャー(GM)と呼ばれるような立場の人は、どのように仕事をしているのだろうか」という疑問である。(コラムVol.87「リーダーとフォロワーの関係に着目」参照)

  見つかった答えは、「物事が実行できるよう努力している」だが、より明確になったことは、リーダーシップとマネジメントは別物だということだ。(What Leaders Really Do, コッター1990)複雑な状況に対処するのがマネジメントの仕事、リーダーシップは、変革をする時に必要な力という違いである。

マネジメントとリーダーシップは共通の課題
  (1)課題の特定
  (2)課題達成を可能にする人的ネットワークの構築
  (3)課題を達成する
を持っているのだが、取り組み方は異なる。当然のことながら、仕事をする際、一人の人が両方の役割を実行しなければならないのだが、組織内の地位が高くなるほどリーダーシップの比率は高くなるのが普通だ。
 

リーダーは生まれつき、ではない

  リーダーシップとは変える時に必要なものという視点に立つリーダーシップ理論を変革型リーダーシップと呼ぶが、では「どのようにすれば変革型リーダーを育てることができるにか、そもそもリーダーは育てられるものなのか」、というのが次に浮かぶ疑問である。

これに応えたのがノール・M.・ティシーとイーライ・コーエンである。ティシーTichy はGEのジャック・ウエルチに招かれクロトンビルの研修所で2年間(1986〜87)リーダーの育成を実践、ミシガン大学に戻り、「リーダーがリーダーを育成する」という教育的見地からみたリーダーシップ理論を発表した。

(The Leadership Engine :How winning companies build leaders at every level 1997)勝つ企業には組織のあらゆる階層にリーダーが存在し、彼らが次のリーダーを育てていく仕組みがある。成功するリーダーは自分の過去の経験から学ぶ(一皮むける経験をする)。優れたリーダーはアイデア、価値観、エネルギー、大胆な意思決定力を持つ。リーダーは創られる(誰もが潜在力を持っている)等がその答であった。

 

変革の促進者達が必要

  「変える」着目すると、いろいろなことが見えてくる。変えるためには、方向を示す大きな絵(ビジョン)が必要だが、それだけでは不十分で、その絵がいかに素晴らしいか、その方向に進まないと、こんな困ったことが起こるなど、ビジョンについて大勢の人に説明する伝道者、語り部が必要なことが分かってくる

。しかし、大きな絵があり語り部もいても、実際には、なかなか変化はおこらない。実行をサポートする人たちがいなければならないからだ。フォロワーを協力する気にさせるサーバント・リーダー(前出コラムVol.87)、ネットワーク・リーダーやファシリテーター、と呼ばれる、指揮命令型とは異なるタイプのリーダー達である。

ちなみに、ネットワーク・リーダーとは、組織内を広範囲にわたって動き回り、同じような考えや感性を持つ人たちのネットワークに参加して、そのネットワークを拡充する触媒の役割を果たす人(P.M.センゲ、 金井 前掲書)であり、ファシリテーターとは、中立的な立場で、チームのプロセスを管理しチームワークを引出し、そのチームの成果が最大化するよう支援する人(フラン・リース ファシリテーター型リーダーの時代)のことである。

 

先頭に立たないリーダーが必要

  サーバント・リーダーやネットワーク・リーダーといった人達は、別な表現をすれば、先頭に立たずにチームをリードする人である。チームビルディングの技術を持つリーダーといってよい。先頭に立たないリーダーが必要な理由は、リーダーが答えを持っていないためである。一人では答えをだせず、いろいろな人の知恵を集めなければ、解決案が見つからない問題が増えたからだ。次回は、「チームビルディングの技術を持つリーダー」について考えてみよう。

 

 

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