新しく事業を立ち上げる場合は別にして、多くの場合、企業文化は変数というよりは所与の条件である。企業文化は組織学習の結果という側面を持つからだ。組織がこれまでの事業経験を通して学んだことが積み重なって企業文化となっている。だから気軽に「ご破算で願いましては」とはできない。特に、現在持っているリソースからビジネスモデルを決め、それに従う戦略を採用する傾向が強い日本企業にとって、企業文化は、所与の条件である。従ってこれを変えようとすると大きなエネルギーが必要になる。
企業文化が変わりにくい理由は、ビジネスモデルで闘うという21Cの競争の仕方によるところも多い。企業文化は、お客さんの要求や好みに合わせようと努力した結果であるので、ビジネスモデルを変更するとき以外に変更する理由は乏しい。また、ビジネスモデルで闘う場合、有力な勝ち方の一つに「資源の効率的な組み合わせで勝つ」という方策がある。自分が得意なところに注力し、不得意なところは他の人に依頼するというものだが、これは自己の得意、不得意に関する認識がベースになっている。
組織が持っている自己認識は企業文化と強い関係があるが、自分を変えることは簡単ではなく、それも企業文化が変わりにくい理由に繋がっている。
要は、企業文化は、「変える」ということに対しては強力な抵抗勢力なのである。
コラムvol.88リーダーシップ開発(9)、vol.89(10)で触れたように、リーダーシップの目標が「効率を上げる」から「競争に勝つ」ために変わったことにより、変革型リーダーシップ理論が生まれ、変革のための8段階や変革の不等式という理論が生まれた。いずれも環境変化に対応して事業構造を変えようとするときのプロセスを定式化しようとしたものであり、企業文化の変更が、かなりな努力が必要なことを示す証拠である。(変革の8段階、変革の不等式については今後のコラムvol.97で議論する予定)