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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.98  企業文化(4)変えるにはどうするかII
 

変えるプロセスについての合意が必要

  現状についての不満に合意が出来、変えた後の姿(新ビジョン)についての合意ができたとしても残る大きな問題は、変える手順についての合意である。

新ビジョンという遠くの旗に到達するための道筋(戦略)を考えるのだが、途中どんな障害にぶつかるかについての合意を得ることは、それほど難しくない。だが、障害の避け方には、ルート変更して避けるか、それとも正面からぶつかって乗り越えるかなど等、いろいろな方策がありえる。どれを選択するか決めなければならない。
 

どのくらい企業文化を変えなければいけないか

  戦略決定の手続きの第一歩は、「外部コンテキストと内部コンテキストの照らし合わせ」だが、これは「現状に対する不満の合意をつくる過程である程度実行されていると考えられる。だが具体策となると更なる検討が必要になる。事前に決める戦略で行くか、事後的に決める戦略で行くか、である。

  前者の場合、新しいビジョン達成のために必要な手段を一から集めることになる。例えば、新会社を設立し、人材も技術も資金も広く外部から集めるというというやり方である。この方向を選ぶのは新しいビジョンの達成のためには、従来の文化が持つ、時間軸基準、顧客基準、効力感基準では、とても対応できないと判断した場合であろう。ただし、三つの基準すべてが合わないというのでは、新ビジョンの選択そのものに無理があったと言わざるを得ない。三つのうち一つの基準については不十分な点があり修正が必要だが、かなり対応できる(10点満点で7〜8点)。残りの二つは相当不足で、かなりな努力を要する(3〜4点)。合計30点満点で13点〜16点程度の持ち点がある、といった内部コンテキストの判定が前提と言えよう。

  後者の場合は、三つの基準のうち二つはかなり対応可(7〜8点)で、一つが不足(5点未満)。持ち点が18〜20点程度という場合であろう。
どちらの場合も、どこをどの程度直すかについて合意を得て変更プロセスを策定しなければならない。

時間軸基準の変更が必要な場合は、事前に決める戦略

  時間軸基準にはいろいろな種類がある。例を挙げると、
    (1)製品のライフサイクルの長短
    (2)お客の要求納期の長短
    (3)価格変動の速さ
    (4)売る速度
    (5)部材の入手に要する期間の長短
などなどが、それである。全体として戦略論でいう行軍速度に相当するもので、上記が競争相手より優れていることが競争に勝つための要件の一つである。

(1)〜(5)は、関連している場合が多い。
関島が経験したパソコンの例で考えれば、マイクロプロセサーの性能によりPCの性能も左右されるので、インテルのCPUのロードマップによってPCの製品サイクルも決められた。機種にもよるがおおむね、半年か1年ごとに新製品の発表があった。マイクロソフトのOSの変更も影響するが、個人の使用期間は長くても3〜4年、生産という意味でのライフサイクルは半年か1年であった。お客さんの納品要期もライフサイクルが短いPCの場合は極めて短く、入札ものでも受注決定後長くても1ヶ月程度、短いものは1週間後。個人の顧客であれば店頭にあるものを購入するので即日。注文の場合でもデルは翌日であったので、我々も「1日以内に納入」を目標にサプライチェーンの改善に努力した。

ライフサイクルが短いので、価格も発表時を100とすると毎月6%程度低下する。6か月後には半分程度になってしまう。マージン率は毎月低下するので、出来るだけ速く造って、早く売ることが求められるのだ。速く造るためには、部材メーカーに対する納品要求期間は短くなる。

  大型コンピューターの場合は4〜5年に1回新世代の機種が発表されるので、PCに比べればライフサイクルは長く、それに伴う(2)〜(5)も長くなり必要な文化も異なる。
時間軸基準の変更が必要という場合は、組織も人も大きく変える必要があるので、事前に決まる戦略が適している。

 

 

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