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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.111  人材開発―再論― (4)「育つ気持ち」を育てる施策III
 

リーダーシップは「変える時」に必要な力

  リーダーシップは、簡単に言うと「何かを変える時に必要な力」である。今日と同じことを明日もやる、今月と同じことを来月もする、昨年やったことを今年もする、というような場合はリーダーシップはいらない。経験者がいたり、ファイルがあったりすればそれで十分だ。

日本の場合、リーダーシップについての最大の誤解は、「人の先頭に立って発揮するもの」という受け止めかただが、そうでない形でのリーダーシップの発揮し方は、いろいろある。ちなみに拙著「チームビルディングの技術」は、「先頭に立たないリーダーシップ」という考え方が基になっている。リーダーシップは、「変えなければいけないことがあり、それを実行する場合」には、必要に応じ、部下や同僚に対して発揮するだけでなく「上司や自分に対しても発揮しなければならないもの」である。

 

自分に対して発揮するリーダーシップ

  自分に対してリーダーシップを発揮する場合、「リーダーは自分でフォロワーも自分」である。ここでもう一度、人を育てるのに必要な三つに力を振り返ってみよう。「育てる力、自分で育つ気持ち、育てる場」であった。育てる力は上司や教育プログラム、周りの期待などで代表されるが、留意すべきは、だめだと頭から決めつけないことで、「決めつけず、期待して、鍛える」のがあるべき姿勢である。これは自分を育てる時にも当てはまる。リーダーとしての自分は、これからやろうとすることの目的や意義を、フォロワーの自分に良く説明し賛成をえなければならない。「どうせできない」「能力的に無理」などと決めつけずに、「君ならできる」と自分に期待して、自分を鍛える計画を立てなければならない。

  一方、自分で立てた計画は実行しなければならない。リーダーは、初めからリーダーであるのではなく、実績を積み重ねフォロワーに信頼されるようになって初めてリーダーの地位を確立する。リーダーになるのには、信頼の貯金が必要なのだ。しかし、自分で立てた計画が実行できないようであれば、自分というフォロワーが、自分というリーダーを信頼できなくなって、信頼の貯金は減ってしまう。

 

リエントリー・プログラム(大気圏再突入計画)が有効

  3DLAのセミナーには、必ず上記がついている。これは、セミナーという特別な環境(宇宙という環境に相当)から職場や家庭(大気圏に相当)といった慣れ親しんだ環境に戻る際(再突入)、教育の効果を維持するために工夫されたプログラムである。この計画が必要な理由は、習ったことを忘れないためで、使わないと3カ月もすれば、15%ほどしか頭に残ってないのが普通である。また、再突入に失敗すると、学習効果が生きないだけでなく、悪い効果を生んでしまう。周りの反感、本人のおごり、習ったことを活かせない不満などなどがそれで、海外でMBAを取って帰国した場合などによくみられるケースである。

  3DLAの代表的なリエントリー・プログラムの事例が「100日プラン」である。研修終了後習ったことを使う100日間の計画を立ててもらい実行してもらうものだ。目標は、自分を鍛えるのに役立つようなチャレンジングなものかどうか、実行が担保される計画になっているかどうかなどがポイント。習ったことを改めて振り返ると同時に、起算日、最初の1週間でやること、1ヶ月以内にやる事、などと言った区分けに従がって計画をたてていく。

経団連のグリーンフォーラムでは、実際に100日後に、100日プランの実施結果を報告する会が持たれる。これまでのところ出席者は全体の30%程度であり、これは自分を自分で育てることの難しさを現しているが、同時に、教育とは与えられるものと受け止められていて、自分で掴むものという意識が薄いということを反映しているようにも思われる。

 

自分で育つための目標としてのキャリアゴール

  課長クラスの場合、100日プランが上手く造れないもう一つの原因は、どういう人生を送りたいかが、はっきりしていないという点に在る。キャリアゴールがあいまいなのだ。キャリアというと、部長、役員など、「なりたいもの」がイメージされ、「なにをしたいか」はあまりイメージされていないケースが多い。だが、ポストや地位などは、組織に属する場合、人事異動やM&A、産業構造の変化などにより変るので、目標となりにくい。もっと、何をしたいかにシフトが必要で、したいことがあるので、特定のポストを目指すという様でなければならない。そうでないと、自分の育てるべき部分、鍛えるべき部分も、はっきりしてこない。

  リエントリー・プログラムはその意味で、目標としてのキャリアを考える機会としても適していると考える。

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