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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.113  組織―再論― (1)組織を創る理由の再検討
 

「組織は戦略に従属する」と「戦略が組織に従属する」

  組織は、戦略の実行手段である。「戦略を実行するのにどんな組織を持ったら便利か」という視点で組織は作られる。「作られる」というのは論理であって実際は、既にある組織に特定の課題を重点目標として与えたり、重点目標実行のために人材を補強したりするのが普通である。より大きな変革が必要な場合には、クロスファンクショナルなチームをつくる場合もあるし、事業部門の新設や廃止と言った改変もありえる。立てた戦略により、いろいろありうるのだ。それゆえ組織は、戦略についての考え方の変化の影響をうける。

  一方、組織の成り立ちについて見てみると、組織は分業の結果である「構造」と、日常的に繰り返される判断である「ルーティン」、及び何が便利かを判断する基準となる「文化」によってできている。ルーティンも文化も長年の経験から学習したことで、一度できると変わりにくいとう性質をもっている。それ故、組織を与件とし、今持っている技術や人材、過去の経験(これらは組織の中に蓄積されている)を前提として、何が出来るかを考えた場合、戦略は、組織の制約を受けることになる。制約の範囲内で競争しなければならないので、競争の仕方の変化によって選べる目標がかぎられてくる。組織は、競争の仕方の変化にも対応しなければならない。

 

なぜ俊敏でなければならないか

  まず、競争の仕方の変化について復習しよう。ビジネス環境の複雑性が高まると、予測が難しくなる。不確実性を制御するための対策は、コラムvol.103(三つの手掛かりの最新バージョン)で触れたが、競争に関するキーワードは「俊敏:agile」「旅行:journey」「即応体制:readiness」 の三つである。

  俊敏であることを求められる理由は、不確実性が高い環境では、ジャンケンの後出し方式が戦い方の主流になるからだ。予測が難しいので、方向が明らかになった時点で、俊敏に自分自身を変化させ、競争相手より早く環境に適応することで勝つ作戦である。

  旅行がキーワードである理由は、旅行は目的地に着くまで続くように、変革も目的を達成するまで終わらない、競争という視点から見ると。変革の最中、すなわち体制の移行期間中が最も攻撃力も防衛力も弱いので、この期間を出来るだけ短くする必要があり、「いったん始めたら、目的地に到達するまでやめてはいけない」という意味だ。

即応体制の整備は、環境変化がどちらの方向に動いてもても素早く対応できるよう準備はしておくべき、との主張である。

 

俊敏であるためには、自律性が高いことが必要

  組織が俊敏に動けるためには、いちいち本社の指示を仰がずとも行動できなければならないが、ここで、組織が自律的に動くための条件は何かを整理しておこう。

  組織が、作られた理由(求められる便利さ)に応えるためにはマネジメントとリーダーシップの二つが必要である。マネジメントとは複雑な環境に対処するためで、予算とか人材とか課題を実行するのに必要なリソースを入手するのに必要な作業で、組織の下部から上部に向かって要求が上がり、回答が上部から下部に向かって流れる。

  リーダーシップは、何かを実行する際に必要な力である。課題を実行する際、作業手順を変えたり、周りの人に賛成してもらうよう説得したりするのに必要である。自律性を高めるためには、マネジメントに関することが現場に任されていなければならない。すなわち下から上にあげるのではなく、その場で決断したものが決定になるよう権限が委譲されていなければならない。そのためには、予め大きな方向については、意見の一致をみていることが前提になる。

 

マネジメントとリーダーシップの違い

  マネジメントとリーダーシップの違いを説明するのに、コッター(J. P. Kotter)は、軍隊の例をあげている(What Leaders really Do)。 平時は上からの統制通り動いていればよいが、一端戦場に出れば、あらゆる階層でリーダーシップが必要になるとしている。瞬時に状況に対応しなければならないからだ。

たとえばアメリカ海兵隊では、これを指揮Command と統制 Control の分権化と呼んで、戦闘の不確実性、無秩序、流動性に最もよく対処するために必要としている(野中郁次郎『知的機動力』)。

  上からコントロールしないで現場に指揮(状況に応じた意思決定の権限)を任せることにより迅速に対応できるようにするためだ。任務を与えるが、その達成の仕方は、任せる。ただし義務はハッキリさせるという方式である。

  しかし、本当に任せっきりで良いのか、全体の活動との整合性はどうとるのか、という疑問が残る。次回はこの問題について考えてみよう。

 

 

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