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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.114  組織―再論― (2)部分と全体という問題
 
 

分権化と集権化のスイング

  組織は分権化と集権化の間を、行ったり来たりする傾向がある。一つは、組織が大きくなるにつれ、意思決定が遅くなるという欠点に対する対策が原因である。

  意思決定が遅れるのは、縦の分業である職位の階層が増えるのと、横の分業である職能区分が増えて、了解を得なければいけない部署が増えるからである。この対策として取られるのが、事業活動に必要な機能をワンセット持つ「事業部制」、事業部を複数持つ「セクター制」、組織内だが独立会社の様な機能を持つ「カンパニー制」、といったように自律的に活動できる範囲が広がるよう組織を分ける分権化である。さらに進めば、独立した会社として分離、全体の制御は持ち株会社が担当するようになる。

しかし組織を分ければ壁が出来、部分最適的な意思決定が行われてしまうという欠点も生まれてくる。これを防ぐためには本社機能を強化し、資金や人材の配分は本社がおこなうとか、事業計画の実行には本社の了解が必要とかの、権限を本社に集中させる方策が必要になる。集権化である。分権化が進みすぎると対策として集権化が採用され、集権化が時代に合わなくなると分権化が推奨されるのだ。

  旅もう一つは、製品別に作った組織と地域別に作った組織が原因の場合だ。事業の進め方は製品によって異なる。そのため多角化が進むと組織は製品別に分けられる。電機産業の例で言えば、重電事業部、家電事業部、情報機器事業部などと言った区分がそれである。

一方、地域ごとに事業の進め方も異なる。東南アジアとアメリカとでは仕事の進め方が異なるのは当然で、あった方が便利と思われる組織も違ってくる。アジア本部、欧州統括本部といった地域別本社も必要になる。事業部門で働く人は、製品別事業部の指示も受けるし、地域本社の方針にも従わなければならない。ボスは二人なのだ。

  地域の自律性を強化する場合(例えば、どの製品の販売に力を入れるかは地域が決定できる、分権化)と、製品戦略を強化する場合(どの地域で何を販売するかは本社がきめる、集権化)では、関係者の意見は一致するとはかぎらない。どちらかの選択が必要になる。状況によって分権化が進められたり集権化が進められたりするのだ。

 

分化と統合

  分権化と集権化を別な視点から研究したのが、P・R・ローレンス、J.W・ローシュの「組織の条件適応理論」である。外部環境が安定的で予測可能な場合(不確実性が低い)は、固定的な組織で良いが、そうでない場合(不確実性が高い)は、変化に対応できる柔軟な組織がよいと考えた。

分化differentiation とは、「異なる諸職能間の管理者たちの間にある認知的ならびに情緒的な思考の相違」と定義されるが、前者の場合は、分化の度合いは低くてよく、後者の場合は分化の度合いは高い必要がある。組織を管理するという視点から見れば前者は、指揮命令系統のはっきりした固い組織、後者は行動の自由度が高いやわらかい組織が適していると考えられる。仕事の内容から判断すると、例えば造部門は硬い組織、研究部門はゆるやかな組織で可、ということだ。

この考え方によると、分権化と集権化は機能によって決まるので、スイングは起こりにくいように見える。だが実際は、コラムVol.63(優位性の活用か、それとも探索か)で解説したように、競争優位性に影響を受けて、どちらかの組織形態が優勢になる。競争優位性を活用する場合は、固い組織が主流となり、探索する場合は、研究部門の様なやわらかい組織が強化される。固い組織の製造部門でも、試作部門の機能が強化されたり、生産技術部門に研究ユニットが新設されたりする。

 

間接統合と直接統合

  メンバーの自律性という視点からみれば、やわらかい組織は、有機的な結びつきで、一人一人の力の合計以上の結果を出すチームワークがもとめられ、その管理の仕方も間接的になるのに対し、固い組織は、機械的な結びつきで、ジグソーパズルのように、一人一人がきっちり役割を果たすことが求められる。そのため管理方法も直接的な方法がとられる。

直接的な管理は規則や命令で実行を担保するの、である意味簡単だが、やわらかい組織の場合は、規則を作っても守られる保証はなく、命令も聞いてもらえないリスクがあるので実行は簡単ではない。自律性を認めてもバラバラな行動にならないようにするには、いろいろな工夫が必要になる。次回はこの点について検討してみよう。

 

 

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