組織は分権化と集権化の間を、行ったり来たりする傾向がある。一つは、組織が大きくなるにつれ、意思決定が遅くなるという欠点に対する対策が原因である。
意思決定が遅れるのは、縦の分業である職位の階層が増えるのと、横の分業である職能区分が増えて、了解を得なければいけない部署が増えるからである。この対策として取られるのが、事業活動に必要な機能をワンセット持つ「事業部制」、事業部を複数持つ「セクター制」、組織内だが独立会社の様な機能を持つ「カンパニー制」、といったように自律的に活動できる範囲が広がるよう組織を分ける分権化である。さらに進めば、独立した会社として分離、全体の制御は持ち株会社が担当するようになる。
しかし組織を分ければ壁が出来、部分最適的な意思決定が行われてしまうという欠点も生まれてくる。これを防ぐためには本社機能を強化し、資金や人材の配分は本社がおこなうとか、事業計画の実行には本社の了解が必要とかの、権限を本社に集中させる方策が必要になる。集権化である。分権化が進みすぎると対策として集権化が採用され、集権化が時代に合わなくなると分権化が推奨されるのだ。
旅もう一つは、製品別に作った組織と地域別に作った組織が原因の場合だ。事業の進め方は製品によって異なる。そのため多角化が進むと組織は製品別に分けられる。電機産業の例で言えば、重電事業部、家電事業部、情報機器事業部などと言った区分がそれである。
一方、地域ごとに事業の進め方も異なる。東南アジアとアメリカとでは仕事の進め方が異なるのは当然で、あった方が便利と思われる組織も違ってくる。アジア本部、欧州統括本部といった地域別本社も必要になる。事業部門で働く人は、製品別事業部の指示も受けるし、地域本社の方針にも従わなければならない。ボスは二人なのだ。