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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.118 HRM戦略再論(1) How to change 時代のHR戦略の在り方

「誰と闘って」「何を獲得するか」が決めにくい

  コラム(76)でHRMの戦略目標について再検討した時は、「HRMは、企業業績に大きく影響をあたえるものに貢献するよう求められる」という歴史を前提とし、外部コンテキストを「世界中に競争相手とサプライヤーがいるという条件下でビジネスモデルを争う」と規定していた。そのため、HRMの目標は、ビジネスモデルを支援するのが第一、そのために、複雑性の制御と、二兎を追う能力、すなわち、時に相反するような価値の同時追及を可能とするような柔軟性を持つHRMが求められる、と考えた。二兎とは、具体的には、グローバルな価値とローカルな価値、会社生活上の満足感と個人生活上の満足感、自由と統制、競争優位性の活用と探索、技術の自主開発とオープン開発、などである。
  そして、戦略目標は、「誰と闘って何を獲得するか」で決まると考え、グローバルな競争相手と闘って、優秀な人材を確保するとした。優秀な人材とは、いちいちベンチのサインを見ないで仕事のできる人、専門性、人間性などを信頼されて相談される人で、関島の言うところの組織内一人親方であった。
  しかし、How to change の時代には、以上のロジックは少し修正する必要がある。変化が激しい時代には、「誰と闘って」や「何を獲得するか」を決めることが難しいし、ビジネスモデルも環境に合わせて変化させなければならないからだ。

目標とすべきは、すばやく変化に適応できる能力の獲得

  複雑性が高くなり、予測が難しい環境下では、強い者が生き残るのではなく、変化に対応できたものが生き残る。よって、戦略目標の最上位は,なにをおいても「変化に適応して、自分や自分を取り巻く環境を変える能力の確保」にならざるをえない。そのためには、まず、変化を当然とする企業文化をつくらなければならない。よって中位の戦略目標は、 変化対応能力の三種の神器、俊敏agile, 旅程(やり遂げるための筋道) journey, 即応体制 readiness を体現した企業文化の創造となる。その上で、HRMの部品を一つずつ、「変化能力の視点から点検する」が具体的な戦略目標になる。コラム113から117まで組織について再検討したように、HRMの各要素を変化対応能力の視点から見直されなければならないのだ。
  では、人材開発についてはどうか。再論としてはコラム108〜112で、長寿命化の影響と自分で育つ気持ちについての問題点と対策、すなわち、戦略ミドル不足、キワード理解、自分に対して発揮するリーダーシップの不足などについて議論した。しかし、人材確保の方法については特に検討していない。だが、How to change の時代の影響を最も強く影響を受けるのは、人材開発についての考え方である。

Make or Buy 原則の修正

  従来の優秀な人材の確保についての考え方は、競争に勝っていて時間に余裕のある時は make そうでないときは buy というやり方は、変化の激しい時代には使いづらい。なぜなら、新しい状況の場合、例えば、AIやビッグ・データの分野に詳しい技術者の需要が急増したような時、対応できる技術者が需要に対応できるほどたくさん育っていないので、買おうと思っても買うことができない場合が多発する。となれば、勝ち負けの状況に関係なくmake が主流にならざるを得ない。
  戦略論の視点から考えても、変化の激しい時代には、物事は計画通り進まないのが普通である。それ故、計画をベースに必要なリソースを集める計画第一の考え方 ではなく、持っているリソース(将来獲得するリソースも含む)を中心に計画を考える資源第一主義の考え方の方が確実である。Buy よりはMake が主となり、Make をいかに速く確実に実行するかが戦略として問われることになる。そうだとすると、変化に適応する能力の獲得という最上位の目標の下位の目標は、「ベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできる人の(確保ではなく)育成」に修正する必要があろう。

HRM部品の変化対応能力の点検が必要

  具体的戦略目標は、HRM全体を一人親方に適したものにすると同時に、一つ一つの部品が、変化を当然と考える企業文化をつくることに貢献できるよう、造り直さなければならない。HRMはビジネスモデルの支援を任務とするが、How to change の時代には、ビジネスモデルも頻繁に変わることが想定されるからである。次回以降コラム103〜117までのHRMの部品に関する検討を、変化対応の視点から再度点検してみたい。

※続きをお楽しみに。

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