キャリアとは、どういう職業人生活を送りたいか,という問いに対する自分なりの答えのことである。その意味では中長期の目標であり、これまでの軌跡でもある。自分なりの答えを出すためには、自分のことをよく知らなければならないが、簡単にはできないことなので、キャリア目標を定めることも簡単ではない。さらには、環境条件やこれまで累積された結果に影響され、長い間には、目標自身が動いてしまうこともある。そこで、こういう課題、あまりハッキリせず、かつ変化する可能性のある中長期的目標、を達成するための道具が必要になる。それが戦略理論である。
戦略とは、遠くの旗を目指し、そこに到達するための地図を描くことである。途中に障害物があれば方向を変えながら進む。遠くの旗が移動すれば、それにあわせ進む方向を修正する。戦略論は、まことにキャリア形成というテーマにぴったりの学問なのだが、キャリアを論じる人と経営を論じる人は別なので、キャリアを論じる場合、戦略論が取り上げられることは少ない。
当然のことだが、企業の業界におけるポジションや産業の発展段階により、採用すべき戦略は異なる。業界NO1企業とNO2企業ではとるべき戦略は異なるし、出現しつつある産業と成熟産業では、選択される戦略は異なってくる。同様に、キャリアという長期の目標を追求する場合、キャリアを追求するための準備がどの程度出来ているか、各人のキャリア形成がどの程度進んでいるか、により採用すべき戦略は異なってくる。そこで、この小論では、キャリア形成の準備が出来ている度合い別に、採用するべき戦略について検討してみよう。