ビジネスでは、遠くの見える高台の選択の仕方はどのような感じか、少し考えてみよう。ビジネスで新しいことに取り組む場合、良く知った市場に新しい技術の適用を試みるか、良く知った技術を新しい市場に用いてみるかのいずれかであるケースが多い。技術とは広い意味で、知識やノウハウといったものも含まれる。未知の市場に未知の技術でチャレンジするといった大胆な方法もなくはないが、リスクが大きい。既に分かっていることをベースに新しいことに挑戦する方が、リスクは小さいし発見も整理しやすい。
日立の経営研修所時代の経験で言えば、ペンシルバニア大学のウォートン・スクールと合同で行ったエクゼクティブ・プログラムがこれに相当する。我々は経営幹部に何を教えたら良いかは分かっていて、知識も経験もあったが、日本人でない受講生という市場はこれまで未知のマーケットであった。世界クラスのコーポレート・ユニバーシティを目指す以上、この市場に挑戦せずに目標に近づくことはできないと考えた。今年でこのプログラムは3回目となるが、これまで2回やってみて分かったことは、市場のみならず技術の面でもたくさんある。遠くの見える良い高台であった。