ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(8)

 
ブレンド型 e-learning の開発II

受講生との対話機会を増やす

  従来型e-learning の最大の欠点は、最後までやり遂げる人、完走者が少ないという点にある。これは、学習指導をコンテンツとLMSに任せることにより、教える側の負担を軽減した結果でもあるので、ある程度はやむを得ないのだが、やはり受講生との対話の機会が少ないことは、学習効果を高める上では問題といえる。

ブレンド型の良い点は、e-learningで教えることとクラスルームで教えることを相互に関連づけることにより、この欠点を補う仕掛けを作り易いことにある。例えば、e-learning部分は、全体としてクラスルームでおこなう授業の予習になるように設計し、クラスで使うケーススタディは、答えを出すためにはe-learning で学んだ考え方を使う必要があるものにする、などである。

 

プログラムデザイン

  「ビジネスパーソンとしての基礎知識」は、企業に就職したいと考える修士、博士課程の学生に、「企業で活躍するためには専門知識だけでなく、企業経営に関する幅広い知識と能力を身に着ける必要があることを理解させる」ために創られた「企業と仕事特論」の導入部分であり、その構成は次のようになっている。

  e-learning 部分では、「第一部 外部環境の変化」で、現代の企業はどのような形で競争しているかを、「第二部 キャリア開発」では、競争の仕方が個人のキャリア形成に大きな影響を与えたことを学ぶ。クラスルームでは、第三部として、企業で活躍するさい必要なリーダーシップについて学ぶという三部構成である。

全体として、ビジネスパーソンとして必要な基礎知識、「企業の競争のあり方、企業内でのキャリアの伸ばし方、企業内でのリーダーシップの発揮の仕方」を学ぶのが目的だが、「e-learning 部分が、なぜリーダーシップについて学ぶ必要があるのかを示唆する」ように設計されている。第一部、第二部とも学習後理解度テストを受けるようになっていて、これに合格しないと次に進むことができない。e-learning を完了しないとクラスルームには参加できないのだ。

  

事前課題の提出を義務付ける

  受講生との対話を増やすことにより、完走者を増やそうとする対策の第一歩は、事前課題である。事前課題は、受講生に、「この講座は、自分の人生に影響のある大切なことを学ぶためのもの」という印象を与え、本気で完走を目指す気にさせるのが目的である。今回は、合格した者にだけ e-learning を受講するためのパスワードを与えることとしたが、これは、自分の進路について考え方が定まっていない日本人学生には受講を遠慮して欲しいからである。(ちなみに留学生は日本での就職を希望している国費留学生が対象)

受講生を学習目標にあわせスクリーニングすることは、教育の質を高める上で必要な措置で、受講資格は「希望する者」ではなく「受講を希望する者で、受講することが適当と認められたもの」という基準は、選択科目であるので受け入れ可能と考えた。

  事前課題は、手書きのレポート提出とし、提出先は担当教授とした。事前課題に取り組む前に、事前課題の意味を説明し、自己の将来について考えることに興味が薄いという人には、「まだ技術者としての将来を定める準備が出来ていないので、企業と仕事特論の履修を続けるのは適切とはいえない」と伝え再考(担当教授からコメントを受けることを条件に、再提出を許可)をうながした。手書きとしたのは、理解度テストなどの際、コピペをおこない難くするためである。
 

クイズによる進捗管理

  完走サポートのためには、学習の進捗状況を丁寧にフォローする必要がある。そのための手段として各章の終わりにクイズ、を設けることにした(1,2部全体で5章あるので、クイズは5回)。これは、e-learning を楽しくする工夫でもある。

  クイズは3問で、3問とも正解であれば次の章に進むことができる。不正解があると、「こちらにもどって再度学習し、その後クイズに挑戦してください。二度目のクイズに全問正解できない場合パスワードが一旦無効となります」という表示が出、再学習が指示される。再学習の際は、あやふやな部分を選んで重点的に学習できるよう、画面をプリントアウトする機能が顕在化する。

  二度目のクイズ(一回目とは設問が異なる)で全問正解できないと「パスワードを無効にしました。学習方法に問題があると思われますので、担当教員にご相談ください」という表示が出る。相談のうえ新しいパスワードをもらって、始めからやり直すことになる。

  e-learning はパスワード受領後2週間以内にやり終えることが合格の条件になっているが、受講生がどのクイズをやっているかをみれば、進捗状況が分かる。遅れている受講生にはリマインドがいく。第一部、第二部それぞれの最後に理解度テストが組み込まれているが、事前課題と同様に、担当教官に手書きのレポート提出するもので、内容が不十分であれば再提出が求められる。これも LMSに任せっきりにせず、機会をとらえて対話するための工夫である。

  e-learningの説明はこのくらいにして、次回はブレンド型の特徴である「クラスルームと e-learning の組み合わせる仕掛け」について考えてみよう。
つづく
前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

※この関島康雄のコラムについてのご意見・ご感想がございましたら、メールにてお寄せください。
   メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.