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コーヒーブレーク(16)

 
ダイバーシティ活動の問題点1 「仕事が人を育てる」の活用が不足

女性マネジャーの数は増えていない

  大学卒の女性を総合職として本格的に採用を始めてから4分の1世紀以上が経過したにもかかわらず、課長相当職以上に占める女性の比率はわずかである。(平成23年雇用均等基本調査によれば6.8%)男性だけで世界と競争するのでは、とても戦力不足で勝てないのは明らかなので、もっとこの比率をあげなければならないのだが、上記の数字はその努力が効果を上げていないことを示している。原因は会社、本人、それに社会の三者にそれぞれあるのは間違いないが、一番大きな問題は、三者のもたれ合いである。

  三者が自分はさておき、他のひとが悪いというケースは、一番問題解決にたどり着きにくい。製造業でよくみられる例では、工場は「営業は良い製品を安く売ってしまう、本社事業部は余計なことばかり言ってくる」といい、営業は「工場は、値段はコストで決まるのではなく、市場価格で決まるということが分かっていない。

本社は現場のことが分からず、予算のことばかり言う」と非難し、本社は「工場は技術にこだわり、顧客のニーズへの対応が遅い。営業は会社の方向性を理解せずに、売りやすい物ばかり売る」と文句を言う、というのがある。この現象には、かなりの真実と責任回避のための言い訳が共存していて、もたれ合いという意味で女性活用問題と良く似ている。だが、問題の解決のためには他はさておき、それぞれが自分は何をすべきかをまず考えることが必要ではないか。

  

「ダイバーシティ」では、問題解決につながらない

  女性課長相当職以上の比率を上げるためには何をするべきかという議論をする際、必ず女性側から出る意見に「女性のための、、、といったタイトルは、女性を特別視していて反感を感じる」というものがある。このため、ダイバーシティという言葉が代わりに使われる傾向がある。しかし、現在の日本には人種や宗教の問題より女性の活用の方が急ぎ解決しなければならない課題である。

輸入された概念のダイバーシティではなく、女性の活用が問題なのだ。敗戦を終戦と言い換えたり人材を人財としたりしても、問題は解決しない。なぜこの問題が長い時間かかっても解決できないのかにもっと正面から向き合う必要がある。問題が解決できない理由は数なのだ。

 

制度や組織など変わりにくいものを変えるには、数が必要

  現在の地位を実力で獲得した女性が、「女性として特別視されたくない、実力を評価して」という気持ちはよく分かる。しかしそういう人は、現在のところ特別に優秀なグループと言わざるを得ない。問題は普通な人である。男性の場合、昔ほどではないにしてもある程度の年限が立てばたいていポストに就く。「あいつもそろそろ課長にしないとかわいそうだ」という力が働く。だが、任用率6.8%は、女性にはそういう力が働いていないことを示している。世界と男だけでなく男女で闘うのであれば、普通の女性も同じように「ある程度の年限が立てばポストに就く」、でなければおかしい。
  任用率が低い理由に勤続年数が短いとか、本人が希望しないとかが挙げられ、更にその理由として社会制度の問題や文化の問題が取り上げられる。しかし、年金問題や選挙制度の例を見ても分かる通り、制度や文化は簡単には変わらない。変えるには数の圧力が必要である。
 

仕事が人を育てるという方法を使うべき

  普通に頑張る女性を応援する方法は、「仕事が人を育てる」という男性に適用されている方法を女性にも使うのがよい。日本の場合、課長になる能力が備わったから課長になるのではない。課長になってから力を付けるのだ。上司は「課長になったのだからこのくらいのことは自分で決めろ」と言い、部下も「課長になったのだからこのくらいのことは部長の了解を取ってくださいよ」と言う。周りにおされて本人も頑張る。丁度「小学校に入ったのだから靴の紐ぐらい自分で結びなさい」と母親に言われて出来るようになるのと同じである。

 

リーダーシップ・トレーニングが有効

  だがこの対策も本人が、「管理職になると責任が増え大変なので」と、昇進にしりごみするのでは効果が薄い。よって、このあたりの誤解を解き昇進に前向きになってもらう必要がある。実際問題として、部長や課長は仕事を一人でやっているわけではない。組織という横の分業や、職位という縦の分業を使って仕事をしているのだ。それらを上手に使うためには、リーダーシップが必要ということに過ぎない。

  問題は日本の場合、まだリーダーシップについての理解が十分でないところにある。リーダーシップにも多様な形態があり、その発揮の方法もいろいろある。指揮命令型だけが必要とするリーダーではない。要は、「急がばまわれ」、女性の活躍を促すためにここらで本気でリーダーシップ・トレーニングをしてみてはどうだろうか。

 つづく
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