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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(20)

 
ダイバーシティ活動の問題点5 関係性に対する投資が不足

能力とはなにか

  女性の活用は流行のテーマではあるがトレンドにはなっていない。まだまだ先行派のような行動様式が必要である。ぜひポストを取りに行く勇気を出してほしい。というのが前回(19)の議論であった。しかし、勇気をだしてチャレンジしてもらうためには、もう少し「仕事が人を育てるという日本の仕掛け」を説明する必要がある。例えば、「仕事をする能力」についての考え方である。

 

能力のベースになるのは仕事に関係する知識

  能力とは、何かをすることができる力であるが、そのベースには知識がある。知識を分類すると、一般的な知識と職業に就くために必要な専門知識に分けられる。一般知識には 国や地域に関する常識country specific knowledge 、以下knowledgeは省略)社会人としての常識(その中には仕事をしてお金をもらうということはどういうことかという常識も含まれる)、仕事についての常識(例えば、お医者さんとはどういう仕事)などに区分することができる。

  実際に仕事に就くために必要な専門知識 job specific は、特定の産業で仕事をするのに必要な知識 business specific と特定の会社で仕事をするのに必要な知識 company specific (その会社に特有な工程管理、予算制度、重要とされる数値、企業文化など)及び特定の職場で仕事をするのに必要な知識 team specific (前工程・後工程など自分の仕事と周りとの関係、関連する部署、人間関係など)に区分できる。
いずれも経験年数とともに蓄積されるが、company specific な知識や team specific な知識は、会社を変わったり、人事異動があったりするたびに学び直す必要があり、その意味で仕事をする際必要な基本的知識ということができる。

 

子育ての経験は転用できるが、条件がある

  職業につくためには仕事に関係する知識が重要だが、一般的な知識が大切でないということではない。常識が増えると仕事もやり易くなる。子育ての過程で獲得した知識は職場でも活用できる。子供がサッカーをやり始めたおかげでサッカー選手の名前を覚え、職場での男性の会話に参加できるようになる、などがその事例である。

しかし、ここで留意しなければいけないのは、知識の転用には条件があるということだ。サッカー選手の名前を覚えただけでは、十分ではなく、会話に参加することにより「お互いを知る機会が増えて」初めて一般知識の増加が「仕事をやり易く」する。「会話への参加」が条件なのだ。ここで関係性に対する投資という概念が必要になる。

  関係性の投資とは、自分の仕事を円滑に進めるために必要な投資のことで、人々の感情を動かして意見に賛成してもらったり、協力してもらったりするために使う時間とエネルギーをさす。
意見のぶつかり合いを調整したり、チーム力を上げるために人を育成したりする時間やエネルギーもこれに含まれる。普段から関係性への投資が行われていれば会話への参加は容易である。つまり、一般的な知識も関係性への投資があるとteam specific な知識に転用できるのだ。
 

「関係性に対する投資は当然あるもの」とされている

  通常、「仕事に余白(リダンダンシー)はつきもの」と考えるので、仕事が人を育てる仕掛けには、この関係性への投資が「一定の量、実行される」と想定されている。ところが、子育て期間中は関係性への投資は少なくなりがちだ。飲み会にも参加しにくいし、「残業はできないので、時間内に仕事を片付けよう」と努力すると、無駄なおしゃべりは避けるからだ。関係性の投資は必要と分かっていても、実行は難しいのが現実である。では、どうするか。自分に都合のよい日時が設定できるので、幹事を引き受けるという手もある。しかし対策として一番良いのはポストに就くことである。

  多すぎると批判の多いいろいろな会議、打ち合わせ、歓送迎会、これらは全てポストを中心に運営される。開催日時を決める際、主任・課長や部長の日程が優先される。よってポストに就くと関係性に投資する機会が増えるのだ。会合という場を使って相手を知ったり、自分の考え方を説明したりすることができる。よって仕事もしやすくなり能力も向上する。やはりポストにはチャレンジした方が良いのだ。

 つづく 
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