戦略論では、戦略の位相(ディメンジョン)がテーマになる。戦略目標を軍事力だけで達成すのではなく、国民や社会や文化といったものを活用し目的の達成をやり易くするという考え方だ。位相は相互に影響し弱い部分は別なもので補うことができる。正規軍が劣勢であればゲリラ戦で、軍事力が弱ければ外交力でとか、いろいろな形がありうる。教育力競争に勝つには、このコンセプトを使う必要がある。リソースに限りがあるからだ。
このコラムでは、仕事が人を育てるという概念、リーダーシップトレーニング、先行派の行動様式、関係性に対する投資、日本の仕掛けに対する理解、人材開発担当者の能力など、ダイバーシティ問題のいろいろな位相を取り上げてきた。女性の管理職任用率の向上という問題が、複雑な問題であるためだが、全ての位相で合格点をとらなければ問題が解決しないというわけではない。例えば、女性に対するリーダーシップ訓練を強化すれば、関係性投資が不足がちという弱点は補うことができる。仕事が人を育てるという方法を強化すれば、人材開発担当者が能力不足でもなんとかなる。
次世代に現在の日本の生活水準を引き継ぐという差し迫った問題を解決するため手段の一つが女性任用率の向上である。そのためには、統合的に問題をとらえ、どこをまず対策するか、次にどの位相に手を打つかなど、対策の優先順位を決めて取り組まなければならない。難しい問題の解決には戦略的アプローチが必要なのだ。