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Wharton RAG 報告 2017
2017年6月20日に行われた、リサーチ・アドバイザリー・グループの報告の中で、最も興味深かったアメリカン・エクスプレス上級副社長 Gabriella D. Giglioさんの企業文化変革の試みと、John Lapinski 政治学准教授の大統領選についての講演を紹介します。

1.アメックスの変革:クレジット会社からソリューション提供型企業へ

■アメックスの問題点
クレジット会社間の競争は、単なる金融サービスから、「ビッグデータから導き出したソリューションを提供すること」に変化しているが、その動き に追随できていないこと。
■ソリューション
クレジットカードの使用状況 たとえば出張にどの地域が多く、どのエアラインを使っているか、どこに泊まっているか等のグローバルなデータを使って特別な割引レート(コーポレート・レート)の獲得交渉を行うよう提案する。(今回の報告で述べられたものではなく、よく知られた事例)。
■目標
成長加速、無駄の排除、投資の最適化などの変革を迅速に実行する。
■プロセス
基本方針の設定、プロトタイプ作成、パイトット・プラントによる試行、規模大して実験、制度として定着 ( New Normal ) 。上記を100日間で実行。フェーズごとに、目標になる企業名をあげて、目標の共有化を図った。
例:パイロットではロイド銀行、規模拡大ではイング、New Normal ではグーグル
■コンセプト
Be international、Think lean, Challenge, Commit
少人数のチームで立案し、テストを繰り返し、その結果をフィードバックすることにより、実行可能な成案をえる。Agility 俊敏性がカギ
【関島コメント】
Agility is a journey という言葉が使われた。通常、 変革をおこなう場合、プロセスのフェーズ分けやステップ区分が行われるが、一定期間内に目的地にたどり着くという意味で journey を使うのが流行か。

同じようなケースがIBMの人事部長から翌日のリーダーシップ・コンフェレンス で発表されたが、「改革もゆっくりやったのでは、目標を達成したころには、環境条件が変わって効果のないものになってしまう。やるなら迅速に」が考え方のようだ。利害関係者の合意を得るために時間がかかり、改革がなかなか進まない日本との違いを強く印象付けられた報告であった。

 

2.ラピンスキー准教授の講演 What Just Happened and What is Next

  ディナーのあとの講演で、最も楽しみにしていたものだが、一言で言うと、「なぜマスコミも研究者も間違えたのか」の究明が中心で、実際に投票しない外国人にとっては分かりにくいというか、関心から外れる議論が多く、少し期待はずれであった。

結論は、「データの読み方にバイアスがあった」ということで、「なぁーんだ」なのだが、 ミシガン州などで起こった民主党から共和党への支持の異動は、既に4年前のオバマの選挙の時に起こっていたという発見は意味が深い。
バイアスは、例えば意識調査や出口調査にどの程度正直に答えるかの判断に関するもので、今回の結果からは、かなりな程度正直に答えていない(トランプに投票と言いにくい空気の存在のため)ことが明白になったが、この比率を前回のオバマの時(トランプの場合と同様、初の黒人大統領に反対とは、言いにくい空気が存在した)に当てはめて読み直してみると、民主党から共和党への支持の切り替えは、既におこっていたという結果であった。(ミシガン州など民主党優勢の調査結果に油断し、クリントンは選挙戦終盤ミシガン州を訪問しなかったのが間違い、という指摘につながる)

  実際、今ではなおさらトランプ支持とは言いにくい。「見放されたプアーホワイトの反乱」という解釈は正しいのだが、それだけでなく「中堅層が広範に民社党の均等法的対応に腹落ちしていないことの反映だ」ということ。「人種差別は正しくない、性差別もいけない、同性婚も認めよう、でも、大学入試でマイノリティの方が有利なのは納得できないし、費用の負担も大変で何とかしてほしい。健康管理に注意を払わない人の保険料を負担するのもおかしいと思うのだが、など等」

  ということは、民主党が大きく変化しないかぎり、共和党の優勢は変わらないと考えられる。失策いろいろあっても、政策実行速度に問題があっても、トランプ政権は簡単には倒れないということになる。

 

以上

 
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