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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(48)

 
「働き方改革」とチームビルディングIII 「密度濃く働く」という課題

組織の効率化

  密度濃く働くためには、個人と組織の効率を上げなければならない。個人の効率は個人の能力と意欲の関数とされ、人材マネジメントのいろいろな施策は個人の能力と意欲を高めることを目標とするとされてきた。では組織効率はどのような要素の関数なのだろうか。

  組織の構成原理は、前回のコーヒーブレークvol.47(「働き方改革」とチームビルディングII 組織とチームの違い)でも説明したように「分業」である。それゆえ、分業がうまく出来ているかどうかが組織効率を左右する。別な表現をすれば、組織間のチームワークが良いかどうかが課題ということになる。チームワークとは結果を出すことに協力することなので、各組織間の機能が連動して効率的に動く様、先に述べたインセンティブとコーディネーションが上手に設定されているかどうかが問題となる。

 

目標が明確かどうか

  組織間の協力関係を高めるためのインセンティブの基本となるものは、チームワークが機能するための基本である目標の明確性である。全体の目標、そしてその目標を達成するためにそれぞれの組織に与えられた機能と目標が明確でなければ分業は機能しない。目標が明確とは、何をしなければいけないか、どのくらい努力しなければいけないかが組織を構成している人々にハッキリわかるということだ。

  組織に所属する個人は、組織を作った理由、「仕事を分けることにより効率を向上させる横の分業」の一端を担うことが求められる。それ故、自分の所属する組織の役割を十分理解する必要がある。さらに部長、課長という縦の分業でも、自分に分け与えられた仕事の意味を、十分把握しなければならない。

仕事の意味とは、なぜその仕事が必要か、どういう質的・量的な結果を求められているか、などである。それらを勘案の上、求められているもの(目標)が自分なりにはっきり理解できれば、どのくらいエネルギーを投入するかを判断できる。

しかし、目標の明確化は口で言うほど簡単ではない。その達成を妨げる要因に分業そのものが持つ性質があるからである。

 

分けると壁が出来る

  組織は分けた方が便利だから作られた。それ故、分業のメリットがある限り、ある意味目標はハッキリしている。区分された機能を効率よく実行すればよいだけだ。しかし分業という行為は欠点も持っている。壁が出来るのだ。権限を分けたことで専門性が高まるが、それゆえ他部門からの介入や助言を拒む傾向が出てくる。「余計なことを言わずに専門家に任せよ」である。

一方、自分は専門家としての立場から他の部門に「ああしろ、こうしろ」と言いたくなる。専門性に関する自負が問題を創り出す・技術分野では Not Invented Here といわれる弊害で、自分のところで開発されたもの以外は信用しない姿勢が、効率化をさまたげる。外部の優れた技術や知識、部品・材料をすぐには取り入れようとしないからだ。

  また、実際の状況については十分な知識がないにもかかわらず経理部門が経営についていろいろ発言しすぎて方向を誤ってしまうバックシート・ドライバー問題というのもある。これも壁がもたらした効果のひとつである。
 

壁を超える方策

  高速道路は、利用することによって節約できる時間というメリットに対し料金が高すぎれば利用されない。利用するメリットとコストとの関係を分かり易くすることはインセンティブのもう一つの基本である。これを妨げるのが組織の壁で、その典型が「私の仕事の範囲はこれだけで、他のことは知りません」といった官僚的な働き方である。 こういう反応だと、ある問題を解決するには、どの組織とどの組織を利用すればよいかを判断しにくい。自分でしらべる時間とエネルギーが必要になる。コスト計算がやりにくいのだ。

よって、問題の解決に利用すべき組織はどれとどれかという事を判断できる資料やこれまでの事例の一覧などのルーティーン(通常的な意思決定を定形化したもの)の整備がインセンティブの向上に役立つ。

  一方で、チームワークは結果に対する責任感から生まれるものなので、自分の担当部門を問題なく実行したとしても、全体の成果が十分でなければ、「協力が足りなかった」「実行手順を決める際のすり合わせが不足していた」などの反省を迫られる。時と場合によっては自分の責任範囲を超えて活動することが当然なのだ。

よってインセンティブ問題は、各部署の仕事の範囲、責任と権限をはっきりさせるだけでなく、組織間の協力関係の問題に帰着する。前回のコーヒーブレークvol.47で高速道路と一般道路を結ぶ道路の問題と紹介したコーディネーション問題である。次回はこの問題を考えてみたい。

 

つづく

 
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