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コーヒーブレーク(53)

 
「働き方改革」とチームビルディングVIII 一試合ごとに強くなったか

ライフ・バランスだけで良いのか?

  働き方改革の目的は、簡単に言うと「生産性を向上することによって、余裕時間を生み出し、失われがちなライフ・バランスを取り戻す」になる。ところが、この定義は、誤解を生みだす原因ともなる。生産性の向上は、ライフ・バランスを取り戻すのに必要であるだけでなく、世界中の競争相手に勝つためにも必要なのだ。

  ライフ・バランスを取り戻せば元気が出て、より効率的な仕事が出来るとか、創造的な仕事に取り組めるはずとかの意見はありうる。この意見では、余裕時間が先で生産性の向上が後だ。それなら、職住接近やフレックス・タイムも答えになりうる。しかし、それだけでは、「密度薄く、仲よく、長く働く」働き方の改善には、直接的につながらない。拘束時間の改善はしたが、働き方は変わらないかもしれないのだ。もっと確実に効率向上が出来る方策に取り組むべきと考える。なぜなら、長寿命化に備えなければならないという会社、個人の双方が取り組むべき大命題の解決に、生産性の向上は不可欠だからだ。

  個人は、長寿命化に備え、専門性を高める努力や、時代遅れになった知識をリフレッシュする必要がある。一つのキャリアだけで75歳まで働くのは難しいので、幅広い知識の習得も心がけなければならない。平穏な時代に慣れ過ぎた自分を、変化が激しい時代に適応できるよう鍛え直さなければならない。いろいろあって、勉強する時間を確保は喫緊の課題である。

  会社は競争に勝って生き残らなければならない。日本の戦い方は、生産性の向上に重点が置かれ過ぎ、戦略策定能力やマーケティング力が使われていないという古典的(?)批判も存在するが、それは製造業中心の世界の話。現在の競争は、研究開発力だけでなく、デザインや複雑性が高い状況に対する対応策などで争っていて、知的生産性の向上が求められている。IOT、ビッグデータ、AIをどう使いこなしていくかが課題である。

 

活動を振り返って「Ah Ha」を整理する

  個人であれ会社であれ、生産性の向上には、勝っても負けても一試合ごとに強くなることを心がけなければならない。そのために必要なのは、ひとかたまりの活動が終わるごとに行う振り返り、「Ah Ha (ああそうか!と分かったこと) 」の整理である。チームビルディングの最終期である「終息期 adjourning」とよばれるステージの活動で、次に引き継ぐべきことを整理する作業である。数値データとして分かったことだけでなく、ああそうかと感覚的に分かったことも対象である。 活動を通して出来上がった個人間および組織間のネットワークも大切な成果の一つなので、忘れてはいけない。

  「Ah Ha」が多ければ、活動の目的を達したかどうかにかかわらず成功、少なければ不成功である。少ない場合はチームが立てた目標を達成したとしても反省しなければならない。目標が低くチャレンジする度合が不足していたか、活動に対する身の入れ方が足りなかったかの、どちらかだからだ。

  次に実行するのは、分かったことの評価である。上手くいった理由、上手くいかなった理由を吟味し、次に何を引き継ぐかを整理する。ただし、成功、失敗の二分法ではなく、次に勝つために、維持すべきこと改善すべきことの順で整理しなければならない。競争相手も研究してくるので、今回勝った理由が維持できても次に勝てるとはかぎらない。さらなる工夫が必要である。

 

文章化が大切

  ああそうか!と分かったことの多くは暗黙知に関係する。やってみて、「マニュアルに書いてあることは、こういうことに注意せよということか」と分かったことが「Ah Ha」で, 文章を読んで理解したことと、やってみて分かったことの間の微妙な差である。マニュアルは全てのことを書ききれない。読む人のレベルもさまざまである。本当は、新人には新人向けの説明が、ベテランにはベテラン向けの説明が必要だが、マニュアルの想定はその中間であるため、新人もベテランも時に読み違える。それぞれのレベルで「Ah Ha」を整理し文章化する意味がここにある。

  「Ah Ha」のなかには、一流のプロは「こういう考え方をするのか!「こういう勉強の仕方をするのか!」といった、生き方に関する発見も含まれる。チームによる活動が、効率の向上につながるのは、学習の場として、とても有効だからだ。お手本となる人と一緒に仕事をするくらい学習効果が高いことは、他にあまりない。

 

リ・エントリープログラムの作成と実行

  一試合ごとに強くなるために最後に、あるいは次の試合の前にやらなければならないのは大気圏突入計画「リ・エントリープログラム」の作成である。一つの仕事を終わって別な仕事に取り掛かるのは、宇宙空間から大気圏を再び通って地球に戻るように、一つの環境から別な環境に移ることなので「リ・エントリープログラム」が必要なのだ。違った状況に取り組む前に環境の違いや、これまでに入手した「Ah Ha」のどれが使えるか、よく考えねばならないし、実行に結び付けなくてはならない。使って初めて身に付くので、使わなければ失われる。

  本当の意味で働き方改革を行うためには、人と人のチームワーク、組織と組織の間のチームワーク、さらには一試合ごとに強くなるための工夫が必要といえる。

 

『「働き方改革」とチームビルディング』 以上

 
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