これまでのリーダー像は、先頭に立って皆を引っ張っていく人であった。しかしそれは、リーダーが答えを持っている場合である。この方向に進めば、目的地に到達できると分かっている場合である。しかし、複雑な問題(定義は前回のコラムVol.56参照)の場合は、リーダーは答えを持っていない。
例えば、「売れる洗濯機をつくる」というテーマを与えられたとした場合、値段が安いのがよいのか、一度にたくさん洗えるのが良いのかなど、売れるのに必要な要件を定めなければならない。要件の候補は他にも、少ない水で洗える、音が静か、生地をいためない、洗剤の使用量が少ない、置き場所をとらないなどなどいろいろなものがありうる。
値段が安いためには、素材や部品の値段や組み立て工数などが関係するだけでなく、日本で造るか、中国で製造するかと言った問題も変わってくる。競争相手の洗濯機はどういう特徴を持っているかも考えなければならない。要は、答えは直ぐには分からないのだ。そのため、専門家を集めて考えなければならない。チームによる解決である。この場合、リーダーは先頭に立つのではなく、例えば、皆の意見を十分に引き出すことに注力しなければならない。