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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(68)

 
新チームビルディングの技術XI経験から学ぶには

言葉だけで分かった気になってはいけない

  勝っても負けても1試合ごとに強くならなければ、現代の競争に生き残ることは難しい。生き残るためには、経験から学べなければならない。学習には刺激、反応、統合の3局面が必要と(67)で説明したが、一番重要なのは、反応、心が動くことである。先生が好きだとその学科が得意になるのは、「先生が好き」が行動の起点だ。例えばグローバル化と言う言葉を知って、その意味が分かっても、自分の日常にどのような影響があるかが具体的に想像できない限り、心はあまり動かない。北海道大学工学部の修士と博士課程の学生に、サプライチェーン・マネジメントを教えているが、クラスの最初に「グローバル化が進むと皆さんの生活にどういう影響がありますか」という質問をするが、たいした答えは返ってこない。給与は上がる?下がる?といったヒントを与えられると、ようやく他人事ではなくなり、考え始める。
  「企業は世界中で事業をしている。必要な人材は日本人だけと限らない。実際諸君が就職を希望する大企業では、大卒新規採用者に占める日本人の比率が50%以下というのが普通になりつつある。従って、諸君の競争相手はMITやタイの工科大学の学生だ。ところで、諸君はそれらの学生以上に勉強していますか、」という質問をするとシュンとしてしまう。実際、私のクラスは、半分以上が留学生だが、留学生の方が日本人学生より成績が良い。これまでは自分とは関係が薄いと思っていた事柄が身近な問題となって、「大変だ」とか「油断できないぞ」という感情が生まれる。単語の意味を理解しただけで分かったと思っては、学習は生まれないのだ。

 

コンテキスト理解とキーワード理解ワード理解

  グローバル化といった単語は、その言葉を取り巻く環境(コンテキストとか文脈と呼ばれる部分)の理解がなければ、分かったことにならない。ところが最近は学生だけでなく、企業の課長クラスでも、文脈理解が出来ていない人が多くなった。このことに気が付いたのは学生も課長も、「グループ討議が上手にできなくなってきた」からだ。理由は、文脈理解ではなくキーワード理解が増えたからだ。
  日本語はハイ・コンテキスト言語である。英語であれば、手を表現する場合、hand, arm, shoulder, と区別するが、日本語は手という単語で、おおかた済ましてしまう。手のひらのことを言っているのか腕のことを言っているのかは文脈で判断する。hold up も手を挙げろ、だ。片手ではなく両手を挙げるのは、強盗が拳銃を突き付けているという文脈にあるからだ。
キーワード理解とは、グローバル化だとかコミュニケーションだとか、ある単語を聞いただけで、話していることは自分の理解している文脈にあると考えてしまう傾向のことだ。
  グループ討議は、いろいろな意見がぶつかりあうことにより、新しい見方や答えが生まれることを期待して行うものだが、最近上手にできない理由は、議論が目指すべき方向についての議論が不十分なまま各論に進んでしまうからだ。グループ討議のテーマは何か、目標は何か等々、文脈についての討議がおこなわれないので、良い答えは生まれてこない。
更には、言葉の定義が共有化されていないまま、平気で使ってしまう。「コミュニケーションを良くする」といっても、思い浮かぶことは人により異なる。文脈理解ではなくキーワード理解の問題点がここにある。何をwhat、コミュニケーションというのか、どの様な状況how で使われたのか、 どうして whyその言葉が使われたのか、という文脈があって初めて、コミュニケーションという言葉の意味が明確になり、共有化が可能になる。

 

使ってみなければ、身につかない

  経験から学ぶには、心が動かなければならない(刺激)。経験を振り返り、何を学んだかを整理しなければならない(反応)。学んだことは共有化されなければならない(統合)。それだけでなく、学んだことを本当に自分のものにするには、実際の場面で使うことが不可欠でそれは、統合の大切な後半の局面である。次回はこの点について考えてみたい。

以上

 
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