2000年4月3日のファイナンシャル・タイムズに、「教育の虫にとりつかれはじめた企業」というタイトルの記事がある。世界中で企業内大学を持つ企業の数が、1990年は400社であったが、1999年には1600社に増えたという内容である。企業内大学の定義は、「会社を変えるための戦略的な手段として活用されている教育機関」のことで、単に知識を教えるところではない。企業内大学が増えた理由は、いろいろあるが、その一つは、世の中の競争の速度が速くなって、従業員が自律的に判断して行動することが求められるようになったためである。だが、自社の進むべき方向をよく理解していないと、自律的には動けない。戦略の共有化が必要である。
もう一つの理由は、企業が実戦を通して発見した教訓を、組織として共有化するためである。「学習」とは新たな情報や知識という刺激をうけて行動様式が変化することであるが、戦略や教訓を「学習」できるかどうかが、競争に勝つカギになりつつある。教育力競争の時代と言われる所以である。こうした潮流が日本にも押し寄せ、近年、企業内大学の強化に努力する企業の数が増えたと思われる。