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3Dラーニング・アソシエイツ

米国人材マネジメント協会SHRMの年次大会に参加しました(2)

 
ーリンダ・アルバラドさんの講演ー
 1では、MITバーガー教授の How we compete という講演に触れましたが 2では、基調講演のなかで面白かったリンダ・アルバラド Linda Alvaradoさんの話を紹介します。

アルバラドさんはヒスパニックで女性というハンデキャップにもかかわらず男社会の建設業に就職、やがて自分の会社アルバラド・コンストラクション Alvarado Construction を設立、アメリカで最も有力な建築会社の一つに数えられるまでに成長させました。現在は、もう一人の松井選手が活躍する、大リーグコロラド・ロッキーズのオーナーでもあります。

 

ヘッド・ロックだって出来る

 彼女がロッキーズの野球帽をかぶり、ジーンズをはいてオフィスを歩いていると、お掃除のおばさんと間違えられるとのこと。また、今でも、お父さんの仕事を継いだのですかとか、ご主人の仕事を引き継いだのですかとか質問されるそうだ。そのくらい建設業は男社会のイメージが強い。だが彼女は自分で会社を作ったのだ。

6人の子供の真ん中に生まれ、女の子は彼女だけだったので、男の兄弟とサッカーも野球もバスケットもプロレスごっこも一緒になってした。おかげでヘッド・ロック(プロレスの技の一つ、懐かしい。私も弟とやった)も出来るとのこと。

 

What are you doing here?

 彼女が仕事を求めて建設会社の面接を受けに行ったとき、何しにきたの、とまじめに相手にされなかった。何度も足を運びようやく面接を受けることができたが、「ここでは、お日様の下で、外で、ジーンズをはいて、男の人と働かなければならないのだぞ」と言われた。彼女の答えは、「お日様の下で、外で、ジーンズでよくって、男の人と一緒なんて、健康的で素敵、そのうえ、お給料までもらえるなんて! 是非やらせてください」。

採用されて、現場で補助的な仕事についたが、やがて会社のあちこちに、ヘルメット姿の彼女を描いたイタズラ書きが出現することとなる。やがて、学校でコースをとって知識を習得、契約関係の仕事に携わるようになる。そして、自分の会社を持つことを夢見始めた。

元手は、両親から借りた2500ドル

 彼女が自分の会社を起こしたときの資金は、両親が日干し煉瓦でできた家を担保に入れて借りて、彼女に回してくれた2500ドルであった。最初に取れた仕事は、バスの停留所の屋根と囲いをつくることであった。いつか、セブン・イレブンのお店を建築したい、やがては高層建築も、が希望であった。
 しかし、入札はなかなか成功せず、資金を借りるのも大変な苦労をした。会社の名前からヒスパニックであることが分かってしまうので、名前を変えろとか、トップは男性でなければだめだとか散々言われながら、ねばりづよく仕事をつづけた。

適性は心がけ次第で創り出すことが出来る Attitude makes Aptitude が彼女の信念である。野球好きの彼女の言によれば、「一塁ベースに足をつけたままでは、二塁にはいかれない」のである。

 

タマネギのどっさり入ったホットドッグ

 アルバラドさんは、大リーグ、コロラド・ロッキーズのオーナーだけあって、講演には野球の話がたくさん出てきた。

例えば、現在のご主人と結婚するきっかけになったのは、野球の試合を見に誘われたことだそうだ。その時は、ホットドッグにたくさんタマネギを入れて食べてしまったとのこと。「この人とキスをするようなことにはならない、と思っていたから。」

ホットドッグ

機会を与えよ

 アメリカ企業は野球からたくさん学ぶことができるという。例えば、多様性 Diversity である。色々な国から集まった選手のお陰で野球のレベル上がり、ゲームは面白くなった。
しかし、彼らは「多様性の実現」のために雇われたわけではなく、A ロッド(ヤンキースの主力打者、500号本塁打を最近達成した)やポサダ(同じくヤンキースのキャッチャー)は、実力でその地位を獲得した。(雇用機会均等法のように無理にマイノリティの比率を保つために採用されたのではないという意味。)平等に競争できる場 a level playing field を与えさえすれば、(努力する)人は成功できる、が彼女の信念である。

あまりラテン系の活躍が目立つので、「ヒスパニックは野球に向いているが、アメリカンはバスケットボールに向いている」と負け惜しみをいう人がいるが、そんな時、彼女は「あら、それなら女性は全てに向いているわ」と答える。女性にチャンスをあたえれば、何でもできると言いたいのだ。

 

良くなるか悪くなるかで、中間はない。

 彼女によれば、成功している大リーガーでも、常にビデオをみて研究しているとのこと。自分および他人のプレーを比較して学んでいる。いつも見直し、確認、改善していなければ、成功は維持できない。「良くなるか、悪くなるかのどちらかしかない(有名なフットボールコーチ、ジョー・パテルノの言葉)」。努力するしかないのだ。

 

あれは、女性の仕事

 小学生の息子さんが学校で、将来、お母さんのような建設会社の仕事をしたいですか、と先生に聞かれた時、「あれは女性の仕事なのでやりたくない」と答えたという。彼女のほうも、プロ野球のチームを買いたいとご主人に相談したとき、「クレージー」といわれたが、「Noならテレビの料理番組にでる」と脅したくらいの料理の腕前とか。世の中変わるもので、どれが男性の仕事で、どれが女性の仕事といった区別はなくなりつつある。

ガラスの天井
要は、成功するために必要なのは、積極的にリスクに挑戦する姿勢だ。挑戦を躊躇する人にアルバラドさんは問う。「何をまっているの」と。夢はけして死なない、Dream shall never die が終わりの言葉。

ビジネスの世界には女性の昇進をさまたげるガラスの天井があると言われてきたが、それよりも大きな壁を乗り越えてビジネスで成功した女性の、迫力とユーモアにあふれる講演であった。

以上

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