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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.4  概ねの方向を決める手がかり(3)
               世界均質化か、それとも多様化か

グローバリゼーションの影響

 21世紀には、グローバリゼーションという現象が益々一般化するであろうということには、あまり意見の違いはみられない。しかし、それがビジネスに与える影響については、意見は大きく分かれる。
 一つは、国境をこえて、商品だけでなく資金や人材が自由に移動することにより、世界中が一の市場のようになる。その結果、賃金などの価格が均一化するだけでなく、いろいろな制度も同一の方向に変化すると考える。
会計制度の国際標準化などがその典型である。世界標準を採用しないと企業業績の比較が難しく、そういう国には資金が集まりにくいというプレッシャーが制度改定を促すからだ。企業は同じ土俵のなかで競争することが求められる。
 もう一つの考え方は、そうは言ってもやはり国別の違いは残ると言う考え方だ。アメリカ型資本主義、ヨーロッパ大陸型資本主義、日本型資本主義は、それぞれ特徴点があり、文化的背景もあり簡単には均一化しない。企業は、事業の場所ごとに違った環境に適応することが求められる、ローマではローマ人のするようにせよ、というわけだ。
この二つの考え方は、それぞれに説得力があるのだが、日本とアメリカとフランスの三ヶ所で、実際に事業を経験してみると、どちらも正解とは言いがたい。割り切りが良すぎると感じられるからだ。
 

海外事業に必要な二つのフィット

 企業が外国に進出し、そこで成功した企業になろうとすると、二つのフィット(上手く適合すること)が要求される。一つは、進出した国の環境(法的な規制や競争の状況、お客の好みなど)に会社の運営の仕方がフィットすることであり、もう一つは、採用した会社運営の方法が、自分の強みにフィットすることである。
 製品のデザインが市場の嗜好と合わなくては、売り上げを伸ばすことは出来ないし、手持ちの経営資源である、技術や人材、資金やブランドといったリソースを有効に活用出来なければ、競争に勝つことは難しい。自国内で事業を行っている場合は、長い時間をかけて二つのフィットが出来上がっているので、改めて意識されることは少ないが、海外で事業展開する場合にはこの二つについて、十分検討する必要がある。
 自国でのやり方にこだわりすぎると、外部環境に適応しそこなうし、外部環境に合わせることばかりに眼がいってしまうと、自分の強みを見失ってしまう。世界単一市場論やxx型資本主義が割り切り過ぎに感じられるのは、フランスでもアメリカでも、実際に会社を運営する際、この二つのフィットのバランスに頭を悩ませたからだ。
 

日立は、世界中どこへいっても日立

 海外事業に携わったことがある人は気がついていると思うが、例えば日立は、良くも悪くも世界中どこへ行っても日立であり、GEはGEである。それは、それぞれの企業が自分の特徴点を活かして闘おうとするからで、経営者が日本人であったり、アメリカ人であったりするからではない。進出先の文化や制度にあわせた経営の仕組みを取り入れたとしても、「日立が日立である理由」を放棄してしまったら、恐らく競争に勝てないと思う。

実は80年代、「日本企業が日本企業である理由」はハッキリしていたが、個々の企業が「自分が自分である理由」は、あまりハッキリしていなかった。それでも競争に勝つことができたために、90年代以降、苦戦を強いられるようになったというのが私の観察である。要は、海外での競争が、経営のどの部分を進出先に適応させ、どの部分を自分流で行くかという選択で争われるとすると、答えはいろいろあるという気がする。

 フランスにいたとき感じたのだが、フランスIBMの人事担当副社長は、イタリア人であったが、とてもIBMのにおいがしたし、制度はアメリカ流をたくさん残していた。IBMも日立もそれぞれアメリカ流、日本流を残していたのだが、その当時それでそれぞれうまくいっていた。
  ヨーロッパでアメリカ型でも日本型でも成功できるということだと思う。同じ地域にあったホンダの工場は、同じ日系企業でも日立と運営のしかたはずいぶんと違っていたが、これも成功していた。日本流もいろいろあってよいということになる。均質化でもxx型資本主義でもない、多様化の方に賛成したくなる理由である。

 

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