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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.105  人材の特定―再論―(2)多様な人材の確保

 

多様な人材とは

  ビジネスモデルが変化に素早く対応出来るようにするための方策の一つは、多様な人材を確保することである。だが、これは言うのは簡単だが実行は難しい。多様な人材とはどんな人材の組み合わせなのかはハッキリしない。多様なといっても、ある程度は共通認識があって、チームビルディングでいう混乱期を経て平常期に至るプロセスをたどれるようでないと、チームとしての効率を上げることは出来ない。

専門の違う人、異なる文化的背景を持つ人というのはなんとなくわかるが、そういう人をkeep するにはどうしたらよいかは不明確である。専門性に自信のある人はそれを活かしたいと思うので、十分に力をふるえる仕事が無ければとどまってくれない。

文化的背景が異なれば、価値観も異なるので、喜んで仕事をしてもらうには、どういう環境条件を整えればよいかが人によって異なり、対応はむずかしい。多様なキャリアパス、多様な能力向上の機会などが対策だが、会社がそういうものを提供するのか、社会の方で準備するのかという問題もある。

  結局、ビジネスモデルに従って、あるいは戦略に基づいて、自社の多様な人材についての定義を自分で決め、その上で人を集めざるを得ない。

 

将来必要になる人材

  多様な人材の確保の視点に、現在必要な人材と将来必要な人材という区分もある。この区分の問題点は、現在必要な人材はどういう人かは分かっていても、将来の変化に対応できる人材とはどんな人かは分かっていないことだ。考えられる対応策は二つしかない。必要な人材が分かってから迅速に採用するか、普段から人員の余剰を気にせずいろいろな人材をそろえておくか、である。

前者は、必要により迅速に採用できる体制を整えておかなければならず、そのためには多少コストが掛かっても採用できる資金力やブランド力を蓄えておかなければならない。当然、労働市場の流動性が高いことが前提になる。後者の食客100人型は、経営に余裕がなければ実行できない。
リスク管理の考え方を使い人材ポートフォリオを組む(例えば、現在必要な人材を80%、将来必要と思われる人材20%などという比率で採用)という考え方もありうるが、非効率であることは免れない。せいぜいが、学習意欲の高い人のなかに将来必要とする人材がいると仮定して、支援体制を整えるという程度にならざるを得ない。

 

不確実性対策かイノベーション対策か

  多様な人材を必要とする理由は何か、という質問の答えによっても対策はことなる。前述の「変化に素早く対応するため」は、不確実性が高い場合に採られる対策といえる。「イノベーションのために」であれば、異なる要素のぶつかり合いを求めているので、それを社内に求めるか、社外に求めるかで違いが出てくる。

社内は専門性や文化的背景が異なる人材を、採用する・保有する・組み合わせて使う「競争優位性の活用型と優位性探索型の両方の組織を持つ」というHRMになる。外部に求める場合は「Not invented here 型企業文化を廃し、オープン型の研究開発やM&Aに適した企業文化を育成する」のがHRMの目標となる。

 

研究開発に使われる理論のHRMへの導入

  上記に参考となるのは、研究開発の効率化に使われる理論である。研究開発は、イノベーションを目標としていて、成功するかどうかの不確実性が高いから、である。

  最も普通な方法は、植物の品種を作りだす時に使われる方法で、可能性のある遺伝子を持った種を幅広く集めて育て、成績の良いものだけを残す、という手続きを繰り返すというやり方である。資源配分は、良いものには水や栄養などを補給するが、そうでないものには配分しない方式。人材を広く集め、その中から適材を、時間をかけて選び出していくHRMがこれである。問題点は、時間が掛かることで急激な変化には間に合わない。

  これに対して、成功するかどうかの不確実性が高く、キャッシュフローを生むまでに時間のかかる製品や技術の開発に取り組む時にリスクを軽減する方策が「リアル・オプション」と呼ぶ方式だ。開発のステップを細かく分けて、ステップごとに「研究を続けるor中止する」を判断する。続ける場合は「規模を拡大してor縮小して」とか、「急いでorゆっくり」とかの選択(オプション)を付けた判断をする。規模・手段・速度の三つの軸により判断し、それに応じて資源の投入量を決定する。

  HRMに適応すると「個人が感知した変化を組織のものとするステップ」「対応策を決定するステップ」「実行するステップ」に大別し、その中をさらに細かいプロセスに分け、採用・配置・処遇・人材開発などHRMの部品ごとのオプションを、それぞれ設計し、実行あるいは改廃する形になる。次回以降は「リアル・オプション」の考え方を取り入れると採用・配置・処遇制度とはどう変化するかを考えてみよう。

 

 

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