計画経済と自由主義市場経済の競争という視点から、市場経済も計画経済の良い点を取り入れて、もう少し計画的に運営されるべきだという考え方から企業戦略が生まれたが、市場経済のなかにも注目すべき競争相手が60年代後半に出現した。高度成長を続ける日本である。その行動様式は低価格で市場シェアを獲得するという、非合理的と思われるやりかたであったので、ダンピングだとの非難が集中した。
しかし、日本の方法は理に適ったものだと説明できる理論的根拠を発見したのがBCGボストン・コンサルティング・グループのジョン・クラークソンである。彼はハーバード・ビジネス・レビューに「学習曲線から得られる利益」(1964)で、航空機製造にかかる一機あたりの労働投入量は、製造機数が倍になるごとに2割減少すると説明、これにより累積の生産量が倍になると一定の割合でコストが減少するとする経験曲線の理論がうまれた。この考え方と企業の市場シェアを結び付け、企業の資金の配分方法の道具に仕立てあげた(1969)のが、PPMプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというツールである。(この項、三谷宏治「経営戦略全史」による)
このツールの良い点は、経験曲線や市場成長率、相対シェアは製品別に測定できるという点だ。効率を上げるのに何をすればよいかを具体的に考える手がかりを入手できるからである。
市場成長率が低くなった成熟製品で稼いだお金を、市場成長率が高く相対的シェアが高い製品(累積生産量を増やすことによってコストが下がったので、あるいは機能が優れているなどの理由あり)に投資を集中、市場成長率が低く相対シェアも低い製品(累積生産量が低くコストも下がらない、あるいは機能が劣るなどの理由あり)からは撤退するなど、事業の方向を決定することに活用できる。