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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.106  人材の特定―再論―(3)リアル・オプションとHRM

 

大きな絵(ビジョン)

  リアル・オプションという考え方とHRMの関係を考える前に、もう一度議論の前提を整理しておこう。
  人材の特定の大原則は、大きな絵から決まる。これに即してビジネスモデルが決められ、あるいは次第にはっきりする形で決まり、お客と、提供する価値が選択され、外部コンテキスト、内部コンテキストから戦略が決定される。HRMは、ビジネスモデルをサポートするように、各施策の束を選ぶ。リアル・オプションは、不確実性が高いという環境の下でHRMの各施策を実行する際に用いられる手法。

  大きな絵は、「この指とまれ」方式を採用しようとすると明確なものでなければならず、好き嫌いがハッキリしていることが条件の一つである。以上を前提に、人材の特定にリアル・オプションをどのように使うか、サンプルを呈示しよう。

 

採用・配置・処遇のサンプル

  make or buyが基本で、競争相手に勝っているときは、プロを目指す若者を見習いとして採用し、育てる。負けているときは、追い付くために必要な人材の中途採用が中心になる。採用規模は「Go」 or「 No go」で勝ち負けの判定基準(これは事業別に独自に設ける)に従い決定する。
Go 判定の場合は、競争優位の状況に応じ、ほんの少し勝っている程度なら、内部からの再配置、大きく勝っている場合は勝ち具合により採用人員枠(含む予算)増 
No go 判定の場合、状況の厳しさに応じ、配属停止、再配置、希望退職、解雇の順で対応
当然だが、引き分けの場合はなにもしない。

  採用の原則が「この指とまれ」であるので、配置も「この指とまれ方式」で、その実行水準をリアル・オプション方式により決定する。
Go の場合は、キャリア相談や目標管理面談時の自己申告内容より選択し、社内公募、人事異動(昇格などの優遇措置を伴う)の順で行う。
No go の場合も、ほぼ上記と同様な内容で削減する人を特定する。

処遇の原則はマーケット・プライスである。リアル・オプションがかかわるのは、それにどの程度おまけをつけるかを決める時である。
Go の場合は、賞与やLTIPなどのインセンティブ、No go の場合は、希望退職時の奨励金等の増額に使うことが出来る。

人材開発投資は、戦略実行手段の一つなので、リアル・オプション方式は、あまりなじまない。(但し、だれに優先的に人材開発の機会を割り当てるかは、個人への投資と考えると、研究開発投資と同じなので、使うことができる。進捗の判定方式は、キャリアパスごとに定めることになるので、別途人材開発の項で議論しよう)

 

採用は、変化を感知する道具

  採用活動は、変化を感知する機能を持っている。「採用が難しくなる、イコール、変化への対応が遅れている」である。このサインがでた場合は単にHRMの部品の再検討だけでなく、ビジネスモデルに遡って検討する必要がある。売り上げや受注額も変化を感知する機能を持つが、景気動向の影響もあるので、変動イコール変化の感知とはならない。採用活動も景気変動の影響を免れない。しかしそれ以上に、社会の価値観の変化は若者の職業選択に影響を与える。採用が難しくなったのは、どこかで時代の変化に適応できていない印である。給与を高くするという程度では解決できないことは、女性の採用を増やそうとしても、採用出来ない会社が大企業にも散見されるのは、そのことを物語っている。

ところが、現在のHRM担当者は保守的で、どこの会社も同じような人材を求めていて、学校での学習の結果をあまり考慮していない。勉強することが奨励されないようでは、世界との競争に勝ちにくい。学習に努力した人を評価する採用方式へ、現行の新採一括採用方式を変える必要がある。

  人材の特定についての再考はこの辺にして、次回は、次の部品である処遇について再考したい。変化の速度が速いので、もたもたしていると再考が終わったころには再再考が必要になってしまうので、いそがなければならない。

 

 

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